小説家人生を底上げ 編集担当として目指す未来

——三木さんのパーソナルなことも伺います。ドラマのテーマのように、毒が回ったように脳が痺れて抗えないほど、“好き”に支配されたことはありますか?

小説の編集をしていて、無名作家さんと一緒にバディを組んで、初めは誰にも期待されていなかったのに、世に出してめちゃくちゃ売れた時ですね。その時に、期待していなかった周囲の人たちが「いや、売れると思ってたよ」と手のひらを返すんです(笑)。内心嘘だと思いながらも「そうですよね!」と明るく返す時に、毒が回ったような快感を得ておりました(笑)。編集者は本を売ることが一番の目的なので、この快感をもっと得たいなと思いましたね。

——編集者として、今目指していることなどはありますか?

今は本当に出版不況で、購買読者層は増えていない反面、刊行点数は増えています。その結果、何が起こるかというと、平均的に読者が1人の作家にかけるお金が減っていく。すると、小説家が食べていけなくなってしまう。 2、3カ月かけて1冊本を書いても、例えば印税が100万円もいかないと、家族がいたらとても生活できないです。このままだと小説家を目指す人がいなくなってしまうんじゃないかと思っていて。なので、小説家は面白いものが作れるし、好きなことだけをしていいし、しかも金も稼げる、という姿を見せたいんですよね。そういう作家を僕が作り上げられるようにして、それを見た若い子が、小説賞に応募するなどしてほしいですね。そこを今、頑張っています。

——本作の映像化に際して、特に好きなテーマやシチュエーションは何かありますか? また、これから初めて本作に触れる方に注目してもらいたいのはどんなところでしょうか?

まずは主人公2人の魅力。キャラクターが抜群に立っていると思います。そこを注目していただきたいです。そのうえで、僕はどちらかと言うと、志波の方を見てほしいですね。誘惑されて、それに負けていく、籠絡されていく志波。きちんとして真面目な男が、そうして“墜ちていく”さまって、見ていてとてもハラハラするしドキドキするし目が離せない魅力があると思うんです。僕が男性向けのラノベを作ってきた中にも、ツンデレキャラのツンツンしている女の子が恋に落ちていく姿を、男性読者が愛でるというような作品があって。『毒恋』はそれの逆バージョンですね。ピシッとした男・志波がハルトに籠絡されていく姿を、僕も「観葉植物タイプ」になって愛でたいと思っています。ちなみに、“フィクサー”Iさんが手がけたコミック版は、小説やドラマよりもさらに「ガチ」のプロフェッショナルなBLに仕上がっています。ドラマ、小説、コミックと、それぞれで楽しんでいただきたいです。