近年、コミックをはじめライトノベル、ドラマと、各分野で人気が勢いづく「BL(ボーイズラブ)」の世界。多様性やマイノリティーへの理解が進むなど、共感を得やすくなった時代背景もさることながら、キャラクターの内面や心の葛藤、恋愛・友情模様などを緻密に描き出す作品の在り方も、ファン層の拡大につながっている。
ファンタジーやコメディ、シリアス系など、ストーリーのジャンルも幅が広がる中、ドラマストリーム『毒恋〜毒もすぎれば恋となる〜』は、ラブコメであり、「バディもの」「サスペンス」と、新たな要素も盛り込まれている。物語は、「ワンコ系」天才詐欺師・ハルトと出会った「ツンデレ」エリート弁護士・志波令真が、次第にハルトの魅力に「毒」され、「恋」に落ちていく様子を描きつつ、2人がバディを組み巨悪に立ち向かう展開も見せていく。

ドラマだけでなく、小説・コミックとの3つの「メディアミックス」で発表される点も、見どころの一つ。ドラマ・コミックに先駆け、ひと足早く上巻をリリースしたのが、原作となる同名小説(牧野圭祐著、角川文庫(KADOKAWA)刊)だ。担当編集を務めた三木一馬さん(ストレートエッジ代表)は、ライトノベル編集者としてこれまでにも多彩な作品を手がけ、メディアミックス展開で、原作からのコミカライズやアニメ化も数多く仕掛けてきた。
「一番苦労した」と語るタイトル付けや、作品に「艶」を与えたという“フィクサー”の存在など、『毒恋』誕生秘話を語る。
「美しくて面白い」 BL×バディもの

——今回、BL作品にサスペンスや「バディもの」という要素を盛り込んだいきさつを教えてください。
僕がもともと「バディもの」が大好きで、『あぶない刑事』(日本テレビ系)の時代から老若男女、ずっと愛されてきました。凸凹コンビがいがみ合ったり、ムカつき合ったりする仲なのに、共通した「目的」を見据えると、けんかしながらも協力して進んでいくというドラマがすごく面白いと感じていました。本作ではサスペンス要素として、裁判やアンダーグラウンドな舞台を設定しています。こういうジャンルは、男性も女性も関係なく楽しめるものであるとも思っていました。この普遍的なジャンルと、今のトレンドであるBLを掛け合わせると面白いのではないかと考えたのです。艶がある男性のキャラクター同士の「愛憎一緒くた」なやり取りは、今の時代であればなおさら、ストーリーとしても成立すると思いました。バディものはもともとあったカルチャーですが、切り口としてBLを軸にしたバディものというアプローチをしたのが本作になります。
——ドラマ版の企画・立案をされた渡辺良介プロデューサーとも絶えず打ち合わせしてきたと伺いました。
そうですね。そして、もう1人ブレーンがいて、僕が新卒時代からずっと“同期”として仲の良い女性編集者がいるのですが、その人の知見をとても参考にさせてもらいました。今回『毒恋』のコミック版を出版する白泉社のIさんいう方です。そのIさんに、「バディものでこういうドラマがやりたい」という相談をしながら、これまであった作品と同じではなくて、男性同士の関係性としても面白いアプローチができるかをトライしていきました。プロフェッショナルな彼女のおかげで、例えると、白黒のキャンバスに色を入れてもらったような感じで、作品に「艶」を加えてもらいました。Iさんがフィクサーです(笑)。