ハルトの誘惑=「毒」。苦労したタイトル付け

——打ち合わせで方向性として出たキーワードなどはありましたか?
打ち合わせを進める中で、読者の中にもタイプがいくつかあることを知ったんです。「観葉植物タイプ」という楽しみ方も、初めて知りました。男性読者は「自分がこの作品の主人公だったら」と思って「この子と仲良くなりたい」と介入して楽しむのに対して、BLの主な読者層である女性たちは、自分はそこに介入したくはないんですよね。美しい箱庭を外部から愛でていたい。そのルールは絶対に破ってはいけない、という。そこはとても強く意識しました。「見たいけど絶対に触ってはいけない」という絶妙なバランスを保つように努力しました。

——『毒恋』というテーマにたどり着くまでに、苦労されたことや、いきさつなどを教えてください。
一番苦労したのはタイトルですね。「毒もすぎれば恋となる」という『毒恋』は、渡辺さんが考えました。志波はクールで真面目で完璧主義者なので、その気はないはずなのに、「毒」を注入されていくように自分が侵されていく……そういったドラマを象徴するタイトルになったと思います。自分が変わっていってしまうのを否定したいんだけど否定できない、みたいな描写は、当初からイメージしていたのですが、タイトルをどう付ければいいのか悩んでいたところ、ハルトが誘惑するというアクションを「毒」と表現することで、うまくはまりました。「毒恋」は通常の単語ではないので、あえて気になるようなフレーズになっているのも面白いと思います。「恋毒」でもなく「毒恋」。アンバランスな方が、この関係性も含めていいんじゃないかという話になり、ようやくタイトルが決まりました。