■慣れてくると母親の依存度は増し、親子げんかも
Aさんの母親は抗がん剤治療の後、2月に手術を受けた。その後1か月ほどの入院を経て退院。このときの心境をAさんはこう語る。
「自分の母親なので、自分が面倒をみなきゃいけないという義務感があった。そして、面倒をみるにはこの先も実家にいた方がいいよね、と。でも今までのような生活が続くんだったら仕事は続けられないと思いました。仕事と介護、どっちかを切るしかない、その場合は仕事を切るんだろうなと」
さらに、母親からAさんへの要求も徐々に増えてきたという。例えば、母親を病院に迎えに行く予定だったAさんが仕事の都合で時間通りに行けないと、「なんで時間に来ないのよ」とキレた。
Aさんとしても母親のために実家に帰り、テレワークをしてまで面倒をみてあげているのに、という気持ちがある。そこへキレられると「こっちも“はぁ?”ってなりました。母親のためにやってあげてんのに、って」。
このまま一緒に暮らしたら、いろんなことができなくなってしまって母も含めてダメになる未来しか見えなかった、というAさんは、介護の専門家に相談した。
■「共依存」の状態から抜け出すには“距離を取ること”が必要
相談を受けた「となりのかいご」の川内さんはこの時「母親と距離を取った方がいい」とアドバイスしたのだという。

親は近くに子どもがいると子どもに依存してしまい、子どもは親に頼られていることに自分の存在価値を見いだす「共依存」の状態になってしまう。
そして、子どもは“親孝行すること”を自分の生活の糧としてしまうので、子どもは親の事を1から10までやるようになり、親はできることが減って行くという悪循環にも陥ってしまう。
Aさん親子もそうなりかけていたので距離を取ることを勧めたのだという。結果、Aさんは4月から東京に戻り、母親の投薬治療のタイミングで月に1、2回帰省しているが、母親の生活も自分の生活も今は安定しているという。