3年ぶりの行動制限のない夏休み。帰省して久しぶりに親と対面できた、という人も多かったと思います。しかし、久しぶりに会った親の老けこんだ姿にショックを抱えている人も少なくないようです。

介護の専門家、NPO法人「となりのかいご」代表理事の川内潤さんのところには「親の動きが鈍くなっていた」「物忘れがひどくなっていた」といった変化に驚き、相談に来る人が増えているのだそうです。

中には実家に帰って親の面倒をみながらのテレワークを考える人もいるといいますが、半年間実家で介護をしながらテレワークをしていた男性は、「あのまま実家での介護を続けていたら共倒れだった」と振り返ります。

■「家にいると母が色々頼んでくる」テレワークと介護の両立できずパンク

都内の会社に勤務するAさん(28)。突然「親の介護」という現実が目の前に突きつけられたのは昨年(2021年)10月だった。


愛知県の実家で一人で暮らしていた70代の母親に膵臓がんが発覚。「手術ができるかできないかギリギリの相当悪い状態」になっていた母親を一人でおいておけないと判断したAさんは、職場と相談し、生活拠点を実家に移してテレワークを始めた。しかし…。

Aさん
「仕事にならなかったですね。母は衰弱しているわけではなく、自分で動けたんですが、私が家にいるといろいろ頼んでくる。平日の日中でも普通に頼んでくるので、対応していると気疲れしてしまって」

母親の頼み事は手の届かない場所の掃除や、重い物の買い物、役所や病院への付き添い、といったものだったが、Aさんが日中はテレワークで“仕事をしている”ことを「母親が理解しているのかいないのかわからなかった」とAさんは話す。

「仕事中だから今は動けない」と言っても頼んでくるので、病院の待ち時間にスマホで作業したり、日中捗らない仕事を深夜にしたりしていたが、徐々に生活が破綻していったという。

「テレワークだからできるって思ったけど、そんなに甘くなかった。結論としては介護とテレワークの両立はできなくて、パンクしました。自分が持っている仕事をなかなか他の人に渡すことができず、消化できなくて、得意先からクレームが入ったようです。同僚がなんとかしてくれたと思うんですが、その頃のことは正直よく覚えていません」