米大統領選テレビ討論 ハリス氏優勢は本物?

――討論会終了後の支持率などに変化は表れてきているのか?

TBSワシントン支局 涌井文晶記者:
討論会自体はハリス氏が優勢だったという受け止めが広がっているが、支持率や大統領選の結果にどう影響するかは、まだ見極めきれない現状。選挙戦の行方を決めるのはあくまで7つの激戦州の有権者の投票。

アメリカの政治サイト、リアル・クリア・ポリティクスがまとめている7つの激戦州の世論調査では、9月13日の時点でハリス氏が4つの州でリードする一方、トランプ氏は3つの州でリード。いずれも2ポイント差以内という激戦で、討論会が激戦州の世論に影響を与えたのか今後の調査が注目される。

――今回のテレビ討論会で注目したのはどういう点か?

TBSワシントン支局 涌井文晶記者:
ハリス氏が非常によく準備をしてきたところ。ハリス氏は討論会の前に5日間、ペンシルベニア州のホテルにこもって、側近と模擬ディベートを重ねて準備をしていたが、冒頭でトランプ氏に握手を求めてみたり、トランプ氏の話を聞いているときには呆れたような表情をしてみせたりと、話の内容以外の部分でも効果的にアピールができていた。また、討論の中ではトランプ氏を執拗に挑発し、いらだったトランプ氏から移民が犬や猫を食べているという事実に基づかない発言を引き出すなど、トランプ氏を守りに追い込むことにも成功した。討論会の直後には報道陣が待機していたメディアセンターにトランプ氏が姿を見せて取材に応じるという異例の対応をしたが、これは討論会の中では十分にアピールができなかった、手応えが悪かったと、本人や陣営が感じたためと思われる。

――ハリス氏の出来栄えについてはどう評価するか?

TBSワシントン支局 涌井文晶記者
ハリス氏はトランプ氏を厳しく責め立てて議論を支配していたが、一方で自身の政策については説明不足だと感じた。例えばエネルギー政策を巡って石油を取り出す方法に「フラッキング(水圧破砕法)」というものがあるが、以前とは違って、容認する立場に転じたことを質問された際には真正面から答えずに話をそらしたほか、経済政策も、集会で支持者を前に訴えている中間層支援のメニューをアピールするにとどまった。「自身が大統領になったら何をするのか」、「カマラ・ハリスとは何者なのか」ということについては十分に答えたとはいえなかったと思う。

――選挙戦はいよいよ残すところ50日余りとなったが、今後の注目点はどこか?

TBSワシントン支局 涌井文晶記者:
もう一度、ハリス氏とトランプ氏の討論会があるかが注目されていたが、トランプ氏は9月12日に応じない意向を示した。ハリス陣営は再戦を求めているがどうなるかがまずは注目。
また、10月1日には民主党のウォルズ知事、共和党のバンス上院議員という両党の副大統領候補の間で討論会が行われる。この2人はともに激戦州の白人労働者の票にアピールするため指名されたとみられているので議論が激戦州でどう受け止められるのかがもう一つの焦点となる。また、一部の州では9月中に期日前投票や郵便投票が始まる予定。11月5日の投票日まではまだ50日あるが事実上選挙戦は始まっていくことになる。