11月5日のアメリカ大統領選に向けて、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領がテレビ討論会で初めて直接対決した。激しい応酬となった討論会をアメリカ国民はどう見たのか。大統領選のこの先を読み解く。
初の直接対決 討論は激しい応酬に
ハリス氏がトランプ氏に握手を求めて始まったテレビ討論会。経済政策や不法移民問題などをめぐり、非難の応酬となった。

ハリス副大統領:
中流層と労働階級の生活を向上させるプランを立てているのは私だけだ。トランプ氏のプランは富裕層と大企業に対する減税だ。それが5兆ドル分の米国の債務になっている。富裕層に減税をした分が中間層の負担になる。
トランプ前大統領:
国民の生活費は上がらない。金を払うのは我々を長年ぼったくってきた中国やその他の国だ。私が関税を課した唯一の大統領でそのおかげで中国やその他の国が何十億ドルも我々に払っている。今の経済はインフレによってぼろぼろにされてしまった。我が国の歴史で最悪レベルのインフレだ。
討論の中では、検察官出身のハリス氏がこれまで「犯罪者」と批判してきたトランプ氏を追い詰める場面もあった。
ハリス副大統領:
ぜひトランプ氏の集会に行ってもらいたい。とても興味深いものが見られる。集会ではハンニバル・レクターのような架空のキャラクターについて話したり、風力発電でガンになると言ったり人々は集会の途中で飽きて退屈して去ってしまっている。
この発言にいらだったのか、トランプ氏は不法移民について「(オハイオ州の)スプリングフィールドでは、不法移民が犬や猫、ペットを食べている。これが実際に私たちの国で起こっている恥ずべきことだ」と述べたが、司会者に事実に基づいていないと指摘された。そして討論の最後も応酬は続いた。

ハリス副大統領:
今日は2つの違うビジョンを耳にしたと思う。1つは未来を見据えたビジョン。もう一つは過去を見ているビジョンだ。私たちは過去には戻らない。
トランプ前大統領:
彼女はあれをやる、これをやる、全ての素晴らしいことをやると言うがなぜこの3年半でやらなかったのか。我々は衰退国だ。深刻に衰退している。我々は世界の笑いものになっている。
討論会後 トランプ氏・ハリス氏双方が勝利を主張
民主党 カリフォルニア州ニューサム知事:
トランプにとってひどい夜だったが、国民にとっては素晴らしい夜だった
共和党 副大統領候補JDバンス上院議員:
地域の移民が池で、ガチョウを捕まえて殺していると聞いている。どの動物がスプリングフィールドで消費されているか知らないが、ガチョウは確実に食べられている
TV討論の評価と支持率は? トランプ氏次回討論会応じず
アメリカ大統領選の行方を左右するテレビ討論会。双方の支持者に話を聞いた。民主党支持者は「10点満点で9.5点。前回の(バイデン大統領の)討論会はショックで落ち込んだけれど、きょうは場外ホームランで大成功」。共和党支持者は「トランプ候補はもっと無党派層にアピールできたはずだがみんな彼の実績を分かっているから問題ない」。

討論会後に行われたCNNの調査では、ハリス氏の方が良いパフォーマンスを見せたと答えた人が63%とトランプ氏を引き離しているが、経済政策と移民問題では、トランプ氏が優勢だった。また、有力紙ワシントンポストは「ハリス氏がトランプ氏を防戦に追いやった」と報じるなど主要メディアの評価は、ハリス氏が優勢だったとの論調が大半だ。

こうした中、ハリス氏に強力な追い風も。世界的人気歌手でSNSのフォロワーが2億8300万人余りにのぼるテイラー・スウィフトさんがハリス氏への支持を表明した。「私はカマラ・ハリスに投票します。彼女は権利と大義のために戦うからです」。これにはトランプ氏も強がります。「私はテイラー・スウィフトのファンではなかった。彼女は代償を払うことになるだろう」。

討論会翌日は、アメリカ同時多発テロからちょうど23年となる日。追悼式典では、トランプ氏とハリス氏が握手を交わす場面もあったが、その翌日には「(バイデン氏・ハリス氏と)2回の討論会を行い、十分成功したので3回目はない」トランプ氏はハリス氏が要請している2回目の討論会には応じない姿勢だ。11月5日投開票の大統領選まであと50日余り。
今後の選挙戦はどうなるのか、テレビ討論会を取材したワシントン支局の涌井記者に話を聞いた。