「在職していることは忘れんとってくれよな」人事権をちらつかせた“脅迫”か?
この“告発者さがし”について、片山元副知事が証人尋問で語りました。それによりますと、3月21日の協議で、告発文書を手にした知事が「徹底的に調べてくれ」と発言。この知事の指示を聞き、“告発者さがし”が始まりました。この際、具体的に「何を調べるのか」といった協議はなされなかったということですが、「誰が告発したのか」という“犯人さがし”の方向へ動いたそうです。6日の百条委員会でも片山元副知事から告発文書をめぐって、“単独犯”や“複数犯”といった言葉が聞かれました。
そして3月22日、複数の職員の公用メールの調査に乗り出します。これについて片山元副知事は「知事から徹底的に調べろと言われたので、行為者をさがさないといけないと思った」「元県民局長のメールからは文書の骨子が見つかった」「ほかの職員のメールからは『クーデターを起こす』『革命』などのくだりがあって、かなり不正な目的だと思った」と発言。また、片山元副知事はこの“不正な目的だと思った”という言葉を繰り返していました。これは、公益通報者保護法で保護される対象は“不正の目的がなく通報したもの”とされているため、“不正な目的だと思った→保護する対象ではない→犯人さがしに乗り出した”というロジックとみられます。
そうした中で、3月25日には最初の事情聴取が行われました。亡くなった元県民局長へ最初に事情聴取を行ったのは片山元副知事(と職員)で、人事権をちらつかせるような発言もあったということです。
【事情聴取での片山元副知事から元県民局長への発言】
「名前が出てきた者は一斉に嫌疑をかけて調べなければしゃあないからな。メールで名前が出てきた者は在職していることは忘れんとってくれよな」
元県民局長は当時、退職時期が迫っていました。この片山元副知事の発言は、メールの調査で名前が出てきた“今後も在職する他の職員”に「影響が出ることを忘れんとってくれよな」という意図ともとれます。また、次のような発言もあったということです。
【事情聴取での片山元副知事から元県民局長への発言】
「みんな嫌疑をかけるから、(退職まで)5年なり10年ある者、ようおったけど、わしがチェックするわ、しゃあない。A氏を上げよう(昇格)と思っていたが、どうなってもしゃあないな。それはかまへんな」
事情聴取の結果、片山元副知事は「元県民局長が何度も『1人でやった』『うわさ話をまとめた』と言っていた」と知事に報告しました。ただ、このような事情聴取で元県民局長が真実を発言できたのかは疑問です。
百条委員会でも、「どう考えても“告発者さがし”であり、人事権をちらつかせた脅しでは?」と指摘がありました。それに対して片山元副知事は「その時の一つ一つの発言に厳しいところがあったことは指摘のとおり。反省している」と答えました。
この事情聴取のやりとりについて松田真紀弁護士は、当時の調査方法や状況などを総合的に判断する必要があるとしたうえで、「脅迫罪になり得る」という見解を示しています。発言が怖さを感じさせることになるため、個人の自由な意思決定を奪うことになり、脅迫罪になる可能性があるということです。