緊急手術までの流れ
島根の実家で天城先生が倒れてから、島根の東城大関連病院に搬送され手術開始までの間に静岡にいた世良先生が島根に移動しているのはおかしいとのご指摘をいただきました。一般的に緊急手術までの流れは以下になります。
患者さんが急変して救急車を呼び救急車が到着する(場所にもよりますが20~30分)。搬送先の病院を決定し病院に搬送し病院に到着する(場所にもよりますが20~30分)。各種検査行い薬剤輸血等オーダー各種連絡説明(30分)、麻酔科や手術室の準備、人工心肺のセッティング等(緊急に慣れていて日中なら速いですが土日や夜間なら60分以上)
以上を考えると天城先生が倒れてから手術開始までは2、3時間要します。一般的にも緊急の患者さんが急変して手術に至るまではそのくらい時間がかかるのです。静岡空港から出雲空港まで飛行機で1時間15分ですので、もちろん東城大の場所にもよりますし、関連病院の場所にもよりますが何とか間に合わなくはない距離となります。
天城先生の手術
緊急手術となった天城先生ですが、まず世良先生が開胸して人工心肺を取り付けます。これは実はかなり難易度が高いです。
というのも天城先生は幼少期から何回か手術をしています。手術を一回すると組織は癒着といって他の組織とくっついてしまうんですね。心臓も肺とくっついたり、胸骨とくっついたりしていますので、その癒着を剥がすのが非常に難しいのです。何回か繰り返しているとますます癒着が酷くなりますので大変になります。これを1人で開胸して人工心肺を1人で着けるのは、かなりレベル高いです。手術時間を見てみると30分程度で行なっていますので、これもかなり速い。通常だと1時間以上かかりますので世良先生は相当できる心臓外科医になっています。
佐伯先生が入り、右内胸動脈を癒着から剥がし採取します。天城先生は左内胸動脈を採取されていて、足の静脈も全て取られていますので右の内胸動脈は残っていました。エルカノの指示通りの長さを採取して、ダイレクトアナストモーシスのために左冠動脈主幹部を剥離していくと、世良先生が異変に気づきます。経食道心臓エコー検査で僧帽弁の逆流が増えていたのです。これは上杉会長と同じような状況で、静脈のバイパスが詰まりかけてきていて、心臓の動きが悪くなり心臓が拡張してしまい、中の僧帽弁が逆流してしまったのです。
佐伯先生は何とか佐伯式により僧帽弁を治療しようとします。僧帽弁の形成術は扉の修理と一緒で、弁輪という扉の枠にリングという硬い人工物を縫い付け、広がった枠を小さく縮小します。そして壊れた弁尖という扉を縫って修復していきます。佐伯先生は慣れた手つきでどんどん弁輪に糸をかけていくのですが、途中から針が弁輪から外れてしまいます。弁輪の外側には左房の柔らかい組織があり、弁輪の内側には弁尖という、これまた柔らかい組織がありますので、針を弁輪から外してしまうと左房や弁尖を傷つけてしまい、修理は上手くいきません。
難治性の緑内障を患っている佐伯先生は世良先生に誘導してもらい針先の感覚だけで弁輪に糸をかけていきます。弁輪はしっかりした組織なので、針を刺入すると硬い手応えがありますので、佐伯先生レベルになると針先から伝わる感覚で弁輪を認識できてしまうのです!
しかし、またここで異変が起こります。天城先生の静脈グラフトがいよいよ詰まってしまい、心筋梗塞となり心臓が動かなくなって、しまいには心室細動になってしまうのです。世良先生の言う通り、一旦心臓を止めてしまうか(リアルだと大動脈を遮断して心臓を止めるのがセオリーです)、このまま続けるにはダイレクトアナストモーシスを同時に行わないといけません。人工心肺だけでは血圧が出ない状況となり、佐伯先生は心臓マッサージを行い…。
登場したのは渡海先生!
この先の展開はどうなるのか?!
ちょっと、かなり専門的で難しい話となってしまいましたが、お許しください。
ーーーーーーーーーー
イムス東京葛飾総合病院 心臓血管外科
山岸 俊介

冠動脈、大動脈、弁膜症、その他成人心臓血管外科手術が専門。低侵襲小切開心臓外科手術を得意とする。幼少期から外科医を目指しトレーニングを行い、そのテクニックは異次元。平均オペ時間は通常の1/3、縫合スピードは専門医の5倍。自身のYouTubeにオペ映像を無編集で掲載し後進の育成にも力を入れる。今最も手術見学依頼、公開手術依頼が多い心臓外科医と言われている。