皆伐のための「作業道」が土砂崩れの起点に 業者は対策・植林も

熊本県で69人が死亡・行方不明になった4年前の熊本豪雨災害。県内での土砂崩れは560か所に上り、熊本県・代市の集落も被害を受けました。

付近の住民・山﨑由光さん
「大きなコンクリートのところに家が建っていた。この家の住民の方は流されたけど、奇跡的に何かつかまって」

救出された女性は、こう振り返ります。

救出された女性
「そりゃあ死ぬ思いだったですよね。もうこれで終わりかなと思いました。土砂がバーッと、ずぶずぶと…」

記者 
「土砂はどこから発生しているのですか?」

付近の住民 山﨑さん 
「ここら辺の山主さんたちが業者さんに木を売買させた。業者さんが木を切って竹藪の上から入れた作業道が崩れてきた」

住民たちが疑いの目を向けたのは、皆伐された森でした。重機を山に入れるため、一時的に作られた幅3mほどの道が土砂崩れの一因ではないかと言うのです。

私たちは、蔵治教授と現場を目指しました。

蔵治教授
「何方向からか崩れたルートが最終的に合流していったんですが、その1本がこれ」

ドローンで撮影すると、全体の状況が見えてきました。

さらに山を登ると、土砂崩れの起点の一つに辿り着きました。やはり重機を入れるために作られた道でした。  

蔵治教授 
「もし樹木がちゃんと生えているなら、水をある程度保水をするので、水の集中の度合いは少し抑えられたが、ここは運悪く皆伐の跡地で木がない。木の部分の保水力がないため、一気に水が増水した」

この森を皆伐した業者が、取材に応じました。 

記者 
「どうすべきだったとお考えですか?」

亀田産業 亀田洋さん
「あの雨はどうしようもなかったという言い方を少し強めたい。ためらいもありましたよ、入る前は。民家の上だなとか、石一つ落とせないじゃないですか。作業上、危険なエッセンスの一つにはなる。なおのことデリケートに現場を進めていた」

道には水の逃げ道となる排水路=「横断溝」を備えるなど、細心の注意を払って作業したと答えました。また業者は、「森の木々は切らなければ別のリスクが生じる」とも主張しました。

亀田産業 亀田さん
「1本で1~2トンをざらに超える木があると、風が吹いたときにそりゃ山が動く。雨が降って崩れてもいけない。なので、“更新をしませんか?”っていうことを話している」

皆伐後、業者は確かに植林も行っていました。それでも山は崩れたのです。

NPOの調査によりますと、当時、大きな被害が出た球磨村で起きた土砂崩れの9割以上が、皆伐された場所や作業道などが起点となっていたといいます。

熊本県八代市は、災害の後、新たに「自主行動規範」を策定。業者が山に一時的に使用する道をつくった場合、早期に現状回復することなどを求めています。

豪雨災害も増える中、今、改めて森の在り方が問われています。