エコノミスト・為替ストラテジストのエミン・ユルマズ氏を特別ゲストに迎えて聞いてみた。エミン氏は4月以来、2回目の登場。

――きょうのテーマは「夏の世界同時株安 秋の波乱材料は?」。まずは日経平均を改めてみていく。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
年明けから順調に上がって、一旦もたついたんですけど7月の11日、4万2200円を超えるところまで行ったが、その後一旦天井をつけて、何と言っても8月の頭。円高と株価急落に見舞われた。私の見方では、これまでずっとポジションを積み上げてきた円キャリー取引の巻き戻しが起きただけで、そこに他のヘッジファンドも乗っかって下げ幅を増幅させて株価下落で儲けようとする人たちもいた。売りが売りを呼んだと。つまり、ヘッジファンド同士が空中戦やっていたようなものなので、一般の投資家は全然気にする必要ないし、付き合う必要もないと思っているが、エミン氏は8月の乱高下をどう見たか?

エコノミスト・為替ストラテジスト エミン・ユルマズ氏:
この部分(底値)は機械的な売り。これが3000円分だが、8月5日(月曜日)の午後に起きた底値までのこの下げは、おっしゃる通りキャリートレードの巻き戻しによるもの。この部分というのはいわゆるフラッシュクラッシュ。その分が翌日すぐ戻っているので、だから4万2000円から3万5000円まで調整して、そこから今3万8000円に戻している。調整幅としては、10%を超えてはいるものの下がった部分というのは機械的な売りなのでここを無視すると、調整の範囲内になる。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
だいぶ落ち着いてきたようにも見えますが、もう少し長い目線の株価見ていきます。2020年からだが、特に2023年の春ぐらいから、日経平均も順調に上がってきて、足元ちょっと乱高下しているが、アメリカ株、この青線がナスダック。ナスダックも同じように一旦乱高下した。今のところ回復傾向にあるのでは。二番底はなくはないが、ひとまず安心かなと思っている。エミン氏が解説してくれたように、ヘッジファンドが極端なポジションを積み上げてそのポジションを整理するという動きは一旦解消したと思っている。秋にかけてエミン氏はどう思うか。
エコノミスト・為替ストラテジスト エミン・ユルマズ氏:
キャリートレードは規模でいうと4兆ドルといわれている。実際どれぐらいかわからないが、多分おそらくそれぐらいはあるだろうと。ざっと言うと500兆円、600兆円ぐらいあるものが、1回だけのフラッシュクラッシュで全部巻き戻されたと考えるのはまだ判断が早いかも知れない。実際に巻き戻されたのは2、3割ぐらいではないかと。ただ、おっしゃっているように、一つだけ変わったのが、アメリカのヘッジファンドの投機的な売りポジションは一旦全部解消されたので、それがプラスに転じただけで、シカゴのデータ以外でも普通に円売っている人、キャリートレードでやってる人たちがいるので、その中に日本人もいるし、海外の大きいファンドもいることを考えると、キャリートレードがここまで膨らんだこと自体が時限爆弾みたいなもの。今回、ちょっとしたクラッシュが起きたが、まだまだわからない。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
まだどこに地雷が埋まっているかというのか、まだわからないと。8月の株価乱高下時の売買動向を見ていく。日経平均4万2000円超える高値つけたのが7月の上旬。その後、株価ずっと下がった。(その間)海外投資家はずっと売り越し。つまり海外投資家主導で株価が下がってきた。そのとき個人の投資家はどうだったかというと下がれば買い、また下がったら買い、それからさらに下がったら買いと、ずっとみんな買い下がってきた。足元8月30日の終値だが、今朝ニューヨーク時間終わったタイミングだと時間外取引で、日経平均3万9000円超えている。だから安い時に買った投資家たちは完全に含み益になっている。だから特に8月上旬から中旬にかけて、かなり株価が軟調になってきて、怖くなって売った人もいるだろうし、信用買いで損失覚悟で売らざるを得なかった人もいるだろうが、全体で見ると、結構買い越してて、今回の個人投資家の動向は「あっぱれ」だと思う。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
投資信託で見ても、8月5日(月曜日)は、4400円下がった日。前の週ぐらいから下がり始めていたが、投資信託全体では1600億円も買い越しだった。買い越しになった投資信託の上位10本が全部日本株のインデックスファンドらしい。さらに海外の投資信託。新NISAなどで積立投資してる人も多いが、海外投信も値下がりしたが、円高の影響もあったが、全体では400億円以上の買い越しだったと思う。人気のオルカンカントリー、実はこの週(8月5日~9日)は78億円の流出だったが、ここのファンドにとっては過去最大の流出だったらしいので、それだけ聞くとやっぱみんな怖くなって売ったと思いたくなるが、この78億円はどのぐらいの規模というとファンド全体のたった0.2%。言い換えると、99.8%の人は売っていない。