楠見&ルカとの“偽家族”生活に温かみを!時間経過で変化した部分とは?

全体的にシンプルでスッキリとした印象がある西園寺宅。中村氏は、「西園寺さんはサバサバしていてカッコいいキャラクターなので、そこを膨らませるためにモダンでスタイリッシュなデザインを取り入れました。インテリアはシンプルだけど、3人が一緒に暮らす空間が温かいものになるように、ランプやラグなどの色やディテールにはこだわっています」と、“偽家族”が暮らす和やかな空間作りの秘密を明かしてくれた。

西園寺宅の鍵は電子ロック式。第2話で「サイオンジゴーゴー(310255)」の暗証番号を楠見に教えていたシーンが印象的だが、これも西園寺さんと楠見の絶妙な距離感を表すために加えられた部分だという。「当初は電子ロックにする想定ではなかったのですが、いち同僚の楠見に合鍵を渡すというのも生々しいのでは…という意見も出て変更した部分なんです」。ドラマのセットでは、こういった細かい部分までキャラクターの距離感を表す大切な要素になっているのだ。

物語序盤に引っ越したばかりの頃は少し殺風景にも思えた西園寺宅だが、ストーリーが進むにつれて変化した部分にお気づきだろうか。「楠見親子と一緒に暮らすことになって、少しずつ室内が色鮮やかになっていく様子も表現できたらいいなと。キッチン周りは最初は電子レンジしか置いてありませんでしたが、楠見親子と暮らすことになって食器や家電も揃いました」と、生活感の変化を語る中村氏。第6話の家出騒動で剥がされてしまったが、ダイニングテーブルのルカの定位置には4歳の子どものイタズラらしく、かわいらしいシールも貼られていた。最新のセットでは、テレビ台の周りにルカのおもちゃがさらに増えているのにも注目したい。

賃貸スペースは楠見の真面目さを表す四角い空間に!

「レスQ」のセットインタビューでも紹介した、“西園寺さんから広がる輪”をモチーフにした丸の家具たちは、西園寺宅にもしっかり取り入れられている。「こちらも照明や鏡などあらゆるアイテムを丸いもので揃え、キッチンに接しているダイニングテーブルに関しては、カウンターに合わせて造作しました」と、異なるセットでの世界観の作り込み方を披露してくれた。

では、楠見親子が暮らす賃貸スペースはどうだろうか。丸が特徴的な西園寺宅とは違い、こちらは楠見のきっちりとした性格を表すように、四角いアイテムが多い印象だ。大三島氏は、「4歳の娘と暮らす部屋なので、子どもがぶつかりそうな家具の角は最低限丸くしていますが、第2話で楠見が自ら貼った防音シートは四角を強調させています」と、他セットとの違いを明かす。また「西園寺宅とはところどころお揃いの仕様になっていますが、人に貸し出すことを想定してリフォームされている部屋なので、どんな人が入居してもいいように癖のない色味に」と、入居者への配慮も。「同じ世界観ではありながら、一目見た時にどこで撮っているかがわかるように心掛けています」と、ドラマならではの美術テクニックが飛び出した。

自宅が火事になってしまった後に引っ越してきた楠見親子。「慌てて生活に必要なものを揃えた設定なので、小物類はホームセンターなどで買えるものばかり。皆さんも見たことのあるアイテムが多いのではないでしょうか」と、小物選びにも余念がない。部屋を見渡すと、楠見の手書きで書かれた整理整頓用のラベルが目立つほか、カレンダーには保育園のスケジュールもしっかりと記載されている。犬好きなルカのために集められた犬の模様も多くあるが、楠見の趣味と思われるものは一切ないのも特徴的。楠見がどれほどルカ中心の生活を送っているかが垣間見えるセットになっている。

ワンルームで一口コンロを備えたこの賃貸スペース。一見すると十分な設備が整っているのだが、父と娘の2人の暮らしにとってキッチンは少々手狭ではある。しかし、この不十分さが2人が西園寺宅でご飯をともにする理由づけにもなっているのだ。