大統領選の「激戦州」の中でも今回、最も勝敗に大きな影響があるとみられているのが東部のペンシルベニア州だ。「トランプフォース47」も重点を置いて活動している。

8月中旬、私たちはペンシルベニア州の静かな街・エリーに住む「トランプフォース47」の熱心なメンバー、ティム・クズマさん(58)を訪ねた。

クズマさんは不動産会社に勤めながら、週に2日ほど、選挙ボランティアをしている。自ら「トランプフォース47」のロゴを刺繍したポロシャツやジャケットを作成する熱の入れようだ。

私たちが取材した日には、自宅近くの住宅を10軒ほど戸別訪問。

単にトランプ氏への投票を呼び掛けるだけではなく、「11月5日の投票日に投票に行くのか」「期日前投票の方法は知っているか」など、最終的に1票でも多く積み上げるための細かな働きかけをしていた。

トランプフォース47のメンバー ティム・クズマさん
「トランプ氏を支持すると答えた人でも、4人のうち3人は実際には投票に行かない可能性があります。この地域では、投票率は高くても60%に達するかどうかです。実際に投票するトランプ氏の支持者を増やす必要があります」

活動はあくまでボランティアだが、戸別訪問の件数や研修会への出席などを重ねることでトランプフォース47の中で「昇進」。「キャプテン」などと呼ばれるようになり、トランプ陣営から特別な帽子やTシャツをプレゼントされるほか、選挙集会にVIPとして招かれるという“アメ”がついている。

現在、クズマさんが住む地域で活動している「トランプフォース47」のメンバーは150人ほどで、11月5日の投票日までに300人程度まで拡大したいという意向だという。

トランプフォース47のメンバー ティム・クズマさん
「前回、2020年の選挙では、民主党がこの地域に新たに引っ越してきた家族800軒を一戸一戸訪ねて投票を呼び掛け、結果として民主党が勝利しました。今回、私たち共和党が勝利するためには、もっと多くの新たな有権者を取り込む必要があります」

トランプ陣営が今回、新たに取り組んでいるのは、ボランティアネットワークの構築だけではない。「郵便投票の奨励」も、重要な意味を持つ新たな戦略だ。

トランプ前大統領(5月 ミシガン州での選挙集会)
「どんな方法で投票しても構わない。期日前投票でも、当日に投票所に行っても、郵便投票でもいい」

前回、2020年の大統領選をめぐり、トランプ氏は事前に郵便で票を送る「郵便投票」で大規模な不正があったと主張。自らの敗北を認めない根拠の1つとしていた。

ただ、郵便投票は投票総数の3割程度を占めるともみられている。
そうした事情もあってか、今回、トランプ氏は従来の主張を一転。郵便投票を奨励し、確実に票を積み上げる方針を打ち出した。

「トランプフォース47」のメンバー、クズマさんも、戸別訪問の際に郵便投票の方法を説明。

11月の投票日当日に投票に行くつもりだと答えた人にも、急用が入ったり、体調を崩したりして投票に行けなくなるおそれを指摘し、できる限り郵便投票を活用するよう呼びかけていた。

大統領選まで2か月半。民主党が華やかに党大会を開催する陰で、トランプ陣営は泥臭く、激戦州の票を積み上げている。