アメリカでは「本物」のスポーツ
出水:元々プロのソフトテニス選手として活躍され、世界一にもなり、競技の価値も高めてこられましたが、ピックルボールでも同じようにやっていこうと?
船水:最初、LAにトライアルで3週間ほど行ったんですけど、まずテニスコートがなくて、これ全部ピックルボールのコート?しかも専用?って感じでした。そして全部コートが埋まっていて、熱狂を感じて。アメリカでは「本物」のスポーツなんだと感じ、いろんな人がチャレンジしているという規模感も見ました。ソフトテニスで一度世界チャンピオンになって、また新たに何かもっと広い世界で挑戦してみたいとなった時に、このスポーツは僕にとって挑戦しがいのあるものだと感じて、チャレンジする決断をしました。
挑戦の過程でバカにされて、上手くいかない日々もあったので、それを見返そうということが今のエネルギーになっていると思う。ボレースキルは、世界のトップにも通用することがわかったので、その強みと自信をもって磨きながら、自分に足りないピックルボール独特のディンク技術や、ディフェンス技術を磨いていくことが必要だなと感じてます。一方で、ダブルスが主流なので、仲間作りというものが非常に重要で、引き続き語学の勉強もしつつ、いいパートナーに巡り合うことも練習と同じくらい大事。練習と仲間作り、この二つを追い求めて行く必要があると思っています。
ペアを組んだはずがドタキャンも
出水:ペアはいつ決めるのですか?
船水:ひどいときは前の日の夜に急に決まったりしますね。とりあえず、大会のエントリーをしておいて、会場に行くんですよ。そうすると夜に「組まないか?」と連絡があって、行ってみたらその相手がまだ16歳だったりとか。良いプレー動画を送ってきて、見たら凄く上手かったけど、試合したら全然強くなくて・・・とか、ハプニングばかり。日本でソフトテニスの試合の時には、通訳もいたし、海外では協会の人に全て守ってもらってて。今は一人で予約とって、レンタカー借りて、全部やるのでハプニングは付き物。耐性はついたのかなと。
出水:試合に出るまでに大変なストーリーがあるんですね。
船水:ドタキャンというか、お前じゃパートナー駄目だ、やっぱり辞めようみたいなことを言われたりもしますし。1試合エントリーするだけでも180ドルとかコストがかかるので、彼らも生活がかかっているので、下手な人と組んで、しかもわけのわからない日本人選手となると、相手はリスクでしかないので沢山断られ続けている。
急なオファーに備えて寝る前にもエネルギー補充
出水:私も海外に住んだ経験があるんですけど、何がつらいって食事がやっぱり大変で、和食を求めたりする部分もあるじゃないですか。
船水:レストランでも食事が口に合わなかったり、上手に商品を頼めなかった時は、本当に次の日のエネルギーに支障が出ますね。日本食の「照り焼き」と書いてるけど全然おいしくない、意外と油っぽかったりして食べられない。ですので常にリュックにバナナをめっちゃ入れて、最低でも、大事なこの糖質、エネルギーだけは取れるように、最低限の補食を入れながら・・・食は苦労してます。レストランも行ってみておいしくなかったら・・・もう食事しか楽しみないのに外れたわ~みたいな(笑)
あとは夜でも食べとかないと。夜9時ぐらいにメジャーリーグ選手から練習しようって連絡がきて、一度エネルギーが枯渇した状態で練習に行ったけど、全然アピールにならなかったことがあった。寝る間際まで動けるように、この身体にエナジーを入れておかないとならないです。本当に、都合良いように練習の誘いが来るんですよね。でも僕にとってはそれはチャンスなので、チャンスを拾えるように。寝る前はね、バナナとかみかん食べて待機してる。本当に連絡が来るんです!もうないなと思った時間から連絡が来るので、待機エネルギーを入れてるっていう状況です。
出水:きっと連絡したら来てくれるっていうもう信頼感もあってですよね。
船水:よく言われるのは、練習相手なのにすごい頑張ってくれるって。上手い人は、多分適当に練習相手をやったりするんでしょうけど、トップ選手が「ちゃんと一生懸命ボール追いかけてやってくれるから良い」みたいなことを言ってくれて、そういう日本人的気質がもしかして彼らからしたら、嬉しいのかなと思いつつ、やっぱそういう人に勝たなきゃいけないので、いつかは・・・と思いながら練習に付き合ってますけど。
出水:そうやって技術を盗んでいるんですね。
船水:メジャーリーグの選手は、既に数年プロの試合にでている人が多い。プロトーナメントのポイントも最初から持ってるので、自分が今から挑戦するってことは、そこに追いつかなければいけないんです。プロでも全部のトーナメントに出場し続ける選手はいないんですけど、自分は追いつくために、めっちゃタフで大変ですけど、全大会に出て「時間の差」を回収しようとしてます。