原因は巨大な大気の渦「モンスーンジャイア」 台風を生み出し日本へ運ぶ
横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「今回は特殊な要因があると思っています。その原因は、日本の南海上に広がる『モンスーンジャイア』です」

聞き慣れない「モンスーンジャイア」とは一体何なのでしょうか。
モンスーンは季節風、そしてジャイアは渦巻きのこと。つまりモンスーンジャイアは「季節風の渦巻き」のことをいいます。
日本の上空には「偏西風」という強い西風が吹いていて、寒気と暖気の境目になっています。佐藤副センター長によると、日本の上空付近で南に蛇行していた偏西風が、蛇行が大きくなりすぎて切り離され、取り残された寒気が低気圧となったものがモンスーンジャイアです。日本の南海上にはモンスーンジャイアが形成されていて、南西からの季節風と太平洋高気圧を回る風が反時計回りの巨大な大気の渦を生み出しています。

いま日本周辺には、南側にモンスーンジャイア、東側に太平洋高気圧があります。モンスーンジャイアによる大気の渦と、太平洋高気圧の縁を回る風がぶつかることで、モンスーンジャイアの東から南側では、台風の“卵”である「熱帯低気圧」が発生しやすい状況になっているというのです。
そしてモンスーンジャイアがもたらす影響はこれだけではありません。
横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「渦の東側は風が北向きの流れになっています。この流れに沿って台風が移動しやすいという特徴があります」
この気圧配置では、日本の東側では北に向かう風の流れができています。その結果、発生した熱帯低気圧や台風が北上しやすく、日本付近へと運ばれやすいというのです。
この風の流れに乗って台風5号は岩手県に上陸。6号も日本の東海上を北へと進み、7号は関東付近へと向かっています。
こうした状況はいつまで続くのでしょうか。
横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「太平洋高気圧が強まってくるので、モンスーンジャイアは徐々に小さくなっていきます。今回のモンスーンジャイアに影響を受けるのは、8号までかもしれません。しかし一旦おさまった時期があったとしても、1か月後ぐらいにはまた対流が活発になって台風の発生が多くなるというのは、この時期にはよく見られる現象です。9月も台風シーズンですので、台風の脅威は油断なりません」