日銀副総裁発言で円安・株高に 円高の背景に「円キャリー」巻き戻し

史上最大の下げ幅となった8月5日から一夜明けた証券会社のディーリングルームでは、証券担当者が「やっぱり上げすぎ。上げすぎ」「こんな相場は滅多にないというか何十年に一度の相場」と対応に追われていた。

8月5日に売り込まれた銘柄を買い戻す動きが加速。ほぼ全面高の展開となり、この日の上げ幅は過去最大の3217円となった。ジェットコースターのような相場は7日も続く。大幅な値下がりで始まった株価は一時1100円を超えて上昇した。

きっかけとなったのは、日銀の内田眞一副総裁が講演で「金融市場が不安定な状況で利上げしない」と述べたことだった。講演後の会見では…

日本銀行 内田眞一 副総裁:
利上げについて慎重に考えるべき要素が生じたと言わざるを得ない。

更なる利上げは遠のいたと受け止めた市場は1ドル144円台から3円以上の円安となり、株価を押し上げたとみられる。株価乱高下の一つの要因となっている激しい為替の動き。
番組アナリストの瀬良礼子氏は「行き過ぎた円安から急速な巻き戻しが起きている」と指摘する。

三井住友信託銀行 マーケットストラテジスト 瀬良礼子氏:
4月までは金利差が拡大する一方で、円安・ドル高という動きだったので、金利差と為替相場がうまく連動して動いていたのが、5月ぐらいからその連動が途切れて、為替だけ円安方向にスルスルと動いていた。長期の日米金利差は、実はじわりと縮まってきていたのに、1ドル162円という、大幅な円安はちょっとまずいのではないかと、にわかに見えてきたので急激に円安から円高にシフトした。

今後の円相場を占う鍵となるのが、低金利の円で資金調達し、ドルなどで運用する「円キャリートレード」の解消だ。

三井住友信託銀行 マーケットストラテジスト 瀬良礼子氏:
一番大きく円ショート(円売り)が大幅だったところから比べると(円キャリートレードは)6割7割ぐらいはもう解消されてきている。これ以上日米金利差が急激に縮小するというような見方が出てくると、もう一段円高に動く余地はまだあるとは思うが、年末に145円から150円ぐらいのレベルに近いような形になると思う。