どうなる? 今後の為替相場 企業や景気への影響は…

――為替は、140~145円ぐらいで落ち着いていくと思っているか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
期待も込めて、それくらいで落ち着いてくれると思っている。これから大事なのは、日米ともに金融政策に対する政策当局の情報発信もあるし、市場がそれをどう織り込むのかという話。来週アメリカで重要な統計があるので、それを踏まえて、為替もドル高の期待が残ると145円台後半ぐらいで落ち着くと思う。

――これ以上円高が進まない理由は、投資先としてドルが有望だから?

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
経営者の方たちと話をすると、数年前と決定的に違うのは、世界のGDPを見たときに日本はアメリカへの投資をせざるを得ないという方が非常に多い。

名目GDPをみると、アメリカが世界の4分の1を占め、中国が17%。いま中国ではなかなか投資できない。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
今まではグローバル化の名のもとに、中国にものすごく投資した方も多かったが、そこに壁ができ始めたので、「国内のリターンが少なく、企業は稼ぐ」と考えると、グローバルでリターンが大きく、需要が大きいところは、アメリカ一択になってしまう。そうすると、円を売って、ドルを買う需要は数年前よりも非常に大きい。根本的にはドル需要が多いので円高が急激に進んだとしても、その時はアメリカに投資しようという人が多くなる。

―― 一方で、今の日経平均株価は年初と同じぐらいまで落ちている。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
先々の見方がどうなるかだ。これだけショックが大きいと、先々への不透明感が高まるので、経営者・投資家は慎重姿勢が起きると思う。なので、「アメリカはソフトランディングで大丈夫そう」「日本もデフレからインフレになって、企業経営もこれから大丈夫」という確信度合いが高まるニュースがいくつも揃ってくることで、少しずつ上方のトレンドが出てくると思う。一番の治療薬は「時間」だと思う。

――当面の金融政策の方向性だが、まずアメリカは9月の0.5%の利下げは確実だといわれている。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
この1週間でぐらついていて、「アメリカの統計は意外にそんなに悪いものもない」という見方も出てきていて、0.5%と思われた織り込みが0.25%になってきたりしている。そういう意味では9月、11月、12月で2回ぐらいの利下げをするというのがほぼコンセンサス(合意)になっていると思うが、もう少し回数が多いかどうか。それから2025年以降の見方がまだ固まってない。特に大統領選があってどうなるかわからないということで、アメリカの方も振れている。

――日本はさすがに9月や10月には利上げできそうにない?

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
最短でも12月だと思うが、アメリカの動向を見ながらということになるので、まだ日本の方も固まっていないというのが現状ではないか。

(BS-TBS『Bizスクエア』 8月10日放送より)
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<プロフィール>
矢嶋康次 氏
ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト
金融・日本経済を中心に調査研究
近著「記憶の居場所 エコノミストがみた日常」