8月10日に行われるパリオリンピック™の男子マラソン。そのコースは最も美しく、最も過酷な42.195kmとされ「五輪史上最難関」と言われる。
日本からは3人が出場する。東京五輪で6位入賞を果たした後、一度競技から離れ、再び五輪のマラソン代表の座を掴んだ大迫傑(33、ナイキ)。去年10月に行われた、パリ五輪代表選考会マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で優勝した小山直城(28、Honda)。そしてMGCで2位で代表入りを果たした赤﨑暁(26、九電工)だ。

赤﨑は熊本県大津町出身。世界記録を3回更新した「日本マラソン界の父」金栗四三以来、熊本県勢100年ぶりのマラソン代表だ。MGCでは、放送に映っていない、フィニッシュ後の赤﨑と小山の会話が印象的だった。パリ五輪代表内定の喜びを抱き合って分かち合った二人。

赤﨑選手と小山選手

赤﨑:誰も僕らの事予想していないっすよ。やってやりましたね!
小山:ノーマークだったもんな。マークされてないから。
赤﨑:絶対そうですよ。
小山:楽しみや。
赤﨑:エッフェル塔観にいきましょう!

2時間4分56秒の日本記録を持つ鈴木健吾(富士通)と2度の日本記録を更新し東京五輪6位入賞の大迫傑が2強と目されていた。MGC前の小山の自己ベストは2時間7分40秒、赤﨑は2時間9分01秒とエントリーした65人中58位。しかし、赤﨑はMGCの前に両親に予言していたという。

父・俊文さん:
8月のお盆の休みに帰省してきたので、マラソンの話になって、本人の方から「お父さん、俺、今度のMGCはワンチャンあるかもしれないよ。何かそんな気がするんよ」って。「どういうこと?」って言ったら、「2時間5分、6分台を目指すのが普通のマラソンなんだけど、MGCは順位を決めるから、持ちタイムの2時間9分台のレースに持ち込めば、自分も同じ力を持っているので、ゼロじゃないと思ってる」ということを言っていました。当然2位になるとは思っていなかったので、何をしていいか分からない状況でした。

赤﨑は見事予言通り、2時間9分06秒の2位で代表の切符を掴んだ。

MGCのレースを見て涙ぐむ母・貴子さん

赤﨑はこれまで3度フルマラソンを走り、いずれも2時間9分台。それでも指導する九電工の綾部健二男子部総監督は、赤﨑についてはタイム以上の力を持っているという。

【フルマラソン全成績】  
2時間9分17秒(2022年2月6日 別府大分 7位)※初マラソン
2時間9分01秒(2022年12月4日 福岡国際 8位)※自己ベスト
2時間9分05秒(2023年10月15日 MGC 2位)

綾部監督:
2時間5分、6分台はいつでも出せる。うちの大塚祥平(自己ベスト2時間6分57秒)と同じぐらいの練習とか、それ以上の事をやっていますし、基本的なスピードも大塚よりありますので、タイムも出るんじゃないかなと。赤﨑はスピードタイプの選手だが、そこにしっかりスタミナも付いてきた。

その言葉通り、去年から赤﨑はトラックでも結果を残し、自己ベストを更新してきた。

5000m  13分27秒79(2023年7月8日 ホクレン網走大会)
10000m 27分43秒84 (2024年5月3日 日本選手権)