パリは鳥人ブブカが6m00を跳んだ場所

パリは38年前にも、棒高跳の歴史的な出来事が起きていた。陸上界のレジェンドの1人、S.ブブカ(ウクライナ)が人類初の6m00のバーをクリアしたのである。日本でも各テレビ局はその映像を何度も流し、活字メディアには“鳥人”の見出しが躍った。

ブブカはオリンピックこそ88年ソウル五輪しか勝っていないが、世界陸上は第1回大会の83年ヘルシンキから、97年のアテネ大会まで6連勝。世界記録も84年の5m85から94年の6m14まで17回も更新した。

1cm刻みで世界記録を更新していくことがブブカの代名詞にもなったが、パリで6m00を跳んだ時は、前年の5m94から一気に6cmもバーを上げた。好調を自覚していたからだと推測できるか、人類初6m台のチャンスを逃したくないと考えたのだろう。当時ブブカの力が突出していたが、他にも5m90台を跳んでいる選手もいた。

それがT.ビネロン(フランス)で84年の8月にローマで5m91を跳んでいる。もっとも、同じ試合でブブカも5m94を跳んだので、ビネロンが世界記録保持者だったのは数分か、十数分だった。

しかしブブカの世界記録更新街道を一度だけ止めたのがフランスの選手だった。そして14年に6m16と、20年ぶりにブブカの世界記録を更新したのもフランス人のR.ラビレニだった。だがラビレニは、活躍した期間こそ長かったが、セカンド記録は6m08だった。1cm刻みで世界記録を更新し続けるという点で、ブブカの後継者と言えるのがデュプランティスなのだ。

ブブカは世界で初めて5m90、6m00、6m10を跳んだ選手。6m20をすでにクリアしたデュプランティスが、6m30を達成しても不思議ではない。ブブカと同じ17回の記録更新を1cm単位で続けられれば、世界記録は6m33まで上がる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)