災害から10年 広島県が進める「逆線引き」

山際で繰り返し発生している土石流被害を受けて、広島県は「逆線引き」の取り組みを進めている。災害の危険が特に高い「市街化区域」について、宅地に使えない「市街化調整区域」に変更することで土地利用を制限し、開発を抑制する範囲を徐々に広げるものだ。これまでとは反対の手法であることから、「逆線引き」と呼ばれている。

広島県は土砂災害のリスクが高い「土砂災害特別警戒区域」の居住者を将来的にゼロにすることを目標としている。対象はおよそ1万か所あり、世代交代が進む50年後には住む人がない状態を目指すという。

広島土砂災害から10年。この間、様々な気象情報が新たに作られてきた中で、ある意味「線状降水帯」は、その象徴のような存在だ。一方で、情報が増えること、情報に頼ってしまうことの危うさもこの情報を通して見えている。これまでの大雨で起きたことを客観的に分析しつつ、逆線引きのような取り組みも含めて、将来的な町づくりの視点をもっと持った災害取材に取り組む必要性も感じている。

<執筆者略歴>
岩永 哲(いわなが・さとる) 
RCC中国放送報道制作局ウェザーセンター所属/気象予報士

1978年 神奈川県出身
2003年 九州大院理学府地球惑星科学専攻修了
2003年 RCC中国放送入社
     報道記者、情報番組ディレクター担当
2014年 RCCウェザーセンター立ち上げ

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。