赤い城壁に囲まれた壮大な城「レッド・フォートの建造物群」

デリーの3つ目の世界遺産は「レッド・フォートの建造物群」。ここはタージ・マハルを作った皇帝が、タージ・マハルのあるアーグラから都をデリーに移し、居城として築いたものです。やはり赤い砂岩を使い、2キロ以上もある赤い城壁に囲まれた壮大な城。まさに「レッド・フォート」=赤い城です。17世紀に築かれたもので、ニューデリーよりも古いオールドデリーと呼ばれる地域にあります。
このようにデリーにある3つの世界遺産はすべてイスラム教が支配していた時代のものです。しかしヒンドゥー教が全面的に禁じられたわけではなく、たとえばムガル帝国の皇帝はイスラム教でも、その支配下にあったインド各地のマハラジャはヒンドゥー教といった具合に共存していました。
その意味で、イスラムとヒンドゥーの要素がせめぎ合っていることが映像的に分かるクトゥブ・ミナールがインドの歴史・文化を象徴していて、興味深く、巨塔も迫力があり映像向きだと思いました。
7月31日に閉幕したニューデリー世界遺産委員会。今年は「佐渡島の金山」など24の新たな世界遺産が誕生し、パレスチナのガザ地区の遺跡が新たに危機遺産に登録されました。
昨年の世界遺産委員会では、ウクライナのふたつの文化遺産が危機遺産に登録されています。戦火は人々やその生活と共に、貴重な文化財も破壊してしまうのです。
戦争と平和…世界遺産にも、その時々の世界情勢が反映します。来年の世界遺産委員会が、より良い状況で迎えられることを願います。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太