「地方にこそピッタリ」な“未来のエンタメ”

山本代表
「ドローンショーを一言で言うと、未来のエンタメです。初めて見た方はみんな目をキラキラさせますよ。僕もその1人でした」

ドローンショーとは、LEDライトを搭載した大量のドローンをあやつり、夜空やインドア空間でイルミネーションを描く演出。1670万色もの光が織りなす鮮やかで壮大なショーは、SNSとの相性も良く拡散力は抜群だ。

Bリーグ記念イベントでのドローンショー(画像提供:ドローンショー・ジャパン)

JリーグやBリーグといったスポーツの記念イベントのほか、最近ではウルトラマンやエヴァンゲリオン、鬼滅の刃といった大人気コンテンツとコラボするなど話題を呼んでいる。

エヴァンゲリオンとのコラボ ©カラー
エヴァンゲリオンとのコラボ ©カラー

このドローンショーを企画・運営する会社を日本で初めて立ち上げたのが、金沢市に本社を置くスタートアップ、ドローンショー・ジャパン代表の山本雄貴さん(40)だ。

山本さんが起業したのは今回のドローンが初めてではない。
大学で経営工学を学んだ山本さんは、新卒でメガバンクに入社したが、“いつかは起業したい”との思いから、休日など空いた時間を使いもっぱらビジネスプランの策定に励んだ。
自信があるものができ上がると、投資家とのマッチングイベントに出向き、プレゼンを繰り返していた。

入社から丸1年で銀行を退社し、オンラインの図書館サービスの会社を起業。その後も占いアプリやフリマアプリ、ライブ配信アプリなどのインターネットサービスを立ち上げ、5社目では目標の一つであった東証マザーズへの上場も果たした。

山本代表
「常に走り続けていないとダメな人間というか。新しいことをやるのが好きなんですよね。新規事業ばかりやってきた人間なので」

目標を果たしたことで起業家としてのある種の達成感を感じる一方、次は何に挑戦しようか、ビジネスの種を探していた。そんなある日、起業家仲間から送られてきた1本の動画に衝撃を受ける。

山本代表
「中国で行われた、1000機以上のドローンによるショーの動画だったんですけど、想像を絶するというか。これ本当に1機1機がドローンなのかと。その後実際に海外でショーを見させてもらって。涙が出るほど感動した。“次はこれだ“と確信しました」

当時、アメリカや中国、ドバイでは当たり前のようにドローンショーが行われていたが、日本ではまだメジャーではなかった。山本さんは早速、日本でドローンショーができないか具体的な道筋を模索することに。法律・規制、競合環境など理解を深める中で見えてきたのは、「地方都市」の可能性だった。

山本代表
「ドローンショーをやるにはそれなりに広い土地が必要なんです。だからこれは東京のスタートアップにはできないなと。地方にこそピッタリなビジネスだと感じました」

石川県内で行ったドローンショーのテスト

かねてから、“地方発で世界と戦えるスタートアップを立ち上げたい”と考えていた山本さん。生まれ育った金沢は、地方都市の中でも比較的人口が多く、新幹線が開通したことで首都圏とのアクセスも良くなった。さらに、車で少し走ればドローンのテストフライトができるという、恵まれた環境があることに気が付いた。

山本代表
「嬉しい誤算もあって、金沢って伝統工芸が発達しているからか、モノづくりに興味がある人が多いんですよね。だから人材獲得にも困らない。天気が悪いのも予想外でしたが…笑」

金沢港で行われた同社初のドローンショー

こうしたアドバンテージもあり、2020年4月、ついに仲間と2人で、日本初となるドローンショーの会社を立ち上げる。