時にはアクセサリーが邪魔になることも。そんなところまで考えているの!?スタイリストの細やかな気遣い

ドラマ衣装のスタイリングでは、主演に対して1人のスタイリスト、相手役には別の担当者がつくことが多いが、本作では遠藤氏が西園寺さんと楠見2人分のスタイリングを担っている。「1人の俳優さんだけを担当する場合もありますが、プロデューサーから『いつも2人でいるキャラクターだから一緒に見てほしい』と言われることも多いです。相手の衣装を確認する手間も省けますし、自分の中で色かぶりも調整できるのである意味楽かもしれません(笑)」。

そう明かす遠藤氏には、20年以上ドラマ全体の衣装を担当していた経歴も。そんな彼だからこそ「ストーリーに沿った衣装を選ぶのがモットーで、見栄えで選ぶことはない」のだそう。「ドラマではワンシーンだけを切り取っておしゃれに見せることはできますが、実際の生活はそうはいかないので、登場人物の1日の生活も大切に。どんなに洋服が好きな方でも、家に帰ったら楽な格好をするように、西園寺さんの場合も部屋着は基本イージーパンツ。Tシャツもビッグシルエットだけに偏らないように、コンパクトなTシャツもローテーションに入れて…」と、アイテムのかわいさに加えてリアルさも求める。着回し感覚で再登場する衣装もあるため、バリエーションやコーディネートの違いにも注目してみると面白い。

「ドラマの衣装では、見た目だけのスタイリングではなく、台本や芝居の流れに沿ったスタイリングをすることも必要。洋服のデザインや色、アクセサリーの華美さが大事なシーンのさまたげにならないようにしています」と続ける遠藤氏。ある時は目立たせ、ある時は存在感を薄くしながらもおしゃれに。視聴者に違和感なくドラマを楽しんでもらうために、さりげなくメリハリをつけるのもスタイリストの役目なのだ。

ドラマの統一した世界観を作り出すために、セットのチェックも怠らないという遠藤氏。「個人的にセットを見るのがすごく好き。その際に西園寺さんの部屋がどんなトーンなのか、会社のセットはどんな配色になっているかなどを確認し、俳優さんが映像の中で沈まないように、背景に馴染んでしまう色は避けるようにしています」と、登場人物の彩り方も披露してくれた。

代用可能な西園寺ファッション。組み合わせに注目を?

毎話「真似したい!」という声が多く上がる西園寺さんのスタイリング。視聴者が憧れの西園寺さんに近づくにはどうしたらよいのだろうか。「西園寺さんの衣装は、強い個性があるスタイリングではないので、同じアイテムじゃなくても身近に似たようなものを探すのは難しくはないと思います。作中で好みのアイテムを見つけたら、似ている服を探し、組み合わせを参考にチャレンジしてみてほしい」と、視聴者の背中を押す。

視聴者がドラマの世界観と俳優の芝居に没入できるよう考え抜かれたスタイリング。「プロデューサーやディレクター、スタッフ全員が細部まで見てくれているからこそ、世界観にピッタリなリアルなスタイリングができていると思う」と、遠藤氏は作品作りがチームプレーであることを改めて口にする。“迷った時はワクワクする服を!” そんな洋服選びをしながら、日々を彩るのも楽しいだろう。