放送中のドラマ『西園寺さんは家事をしない』。原作は7月11日に最新5巻で完結した、人気漫画家・ひうらさとる氏による同名コミック(講談社「BE・LOVE」連載)だ。ハートフルラブコメディを謳う本作では、ドラマならではのポップな鮮やかさの中に、等身大のスタイリングが反映されていることが話題になっている。主人公・西園寺一妃(松本若菜)と、西園寺さんの“偽家族”・楠見俊直(松村北斗)を担当するのは、スタイリストの遠藤和己氏。「“ドラマだからいいじゃん!”ではなく、できるだけリアルに近づけた表現にしたい」という遠藤氏に、キャラクター作りの裏話や、スタイリストならではの気遣いを語ってもらった。

“しごでき”女子の西園寺さんにはスニーカーやフラット靴をチョイス!

本作の主人公・西園寺さんは38歳という設定だが、SNSの反響では同世代だけでなく幅広い層から共感されるキャラクターになっている。これは良い意味でキャラクターの固定概念がないスタイリングになっているのが大きな理由のようだ。通常のドラマでは、役柄をわかりやすくするために使用色やスタイルをある程度固定することも多いのだが、西園寺さんは“やりたいことをやる”キャラクターのため、コーディネートも“好きな服を着たいように着る”というのが西園寺さんらしさになっている。「幅広くおしゃれを楽しむキャラクターに見せるため、服の系統はもちろん、西園寺さんの年収で手の届くハイブランドからプチプラのアイテムまで、自由に混ぜています。実生活でも同じようにファッションを楽しんでいる方が多いと思うので、親近感を持ってもらえているのかも」と遠藤氏は推察する。

仕事好きでバリバリ働く西園寺さんのようなキャラクターは、以前は“バリキャリ”とも呼ばれ、ヒールを履いてカツカツ歩くようなイメージもあったが、西園寺さんはイマドキの働く女性らしく、スニーカーやフラットシューズを履きこなしている。「その点は岩崎愛奈プロデューサーからのリクエストもあり、特に意識しています。昨今、毎日高くて細いヒールを履いて通勤している人は少ないですし、行動力&機動力のある西園寺さんを表現するには正解でした」と、遠藤氏が制作過程を振り返る。

1話分で15ポーズは平均の倍以上!

本作では、仕事服だけではなく、西園寺さんの部屋着スタイルにも注目が集まる。おしゃれなブランド服を着用しながらも、リラックス感を再現する遠藤氏曰く「ドラマの部屋着にはファストファッションブランドを選ぶケースも多いですが、お気に入りの服が汚れたり、形が崩れてしまったものを、捨てるのはもったいないからと部屋着にする方も多いのではないでしょうか」と、実生活でのあるある話をもとにしたこだわりを語る。

さまざまな衣装が登場する本作だが、「大人の美しさの中に、かわいさ&ヘルシーさがある若菜さんだからこそデザイン、色も含めてかっこいいからかわいいまで幅広いスタイリングができる」と、松本ならではのポイントも披露。

そんな西園寺さんのために遠藤氏が衣装合わせに持参したアイテム数は、洋服、バッグ、シューズ、アクセサリーを含む400点近くにも及ぶ。これは、西園寺さんのキャラクターが会社だけで完結するキャラクターではないから。「だいたいの場合、主人公は会社スタイルがメインで、少しだけ自宅スタイルがある程度。でも、西園寺さんの場合は日々の生活シーンが満遍なく描かれるので」とアイテム数にも言及。

シチュエーションごとに変わる衣装を楽しめる醍醐味がある一方、それはポーズ数の多さとスタイリングの煩雑さにも比例する。「西園寺さんに関しては、部屋着を入れると1話分で15ポーズほど。他作品だと主人公でも7、8ポーズくらいが平均なので、いつもの倍以上のポーズ数を作っています。それはもう大変で…(笑)」と、冗談を交えながらもどこか楽しそうな遠藤氏は、はにかみながらこう続ける。「若菜さんはとにかくどんな服を着ても似合う! スタイリングしているこちらも見ていて楽しいので頑張ることができています」。