「脳波が出ない。心臓マッサージとめてもいいでしょうか」
医師による懸命な救命処置を受けながら、病院に搬送された将太さん、目を覚ますことはありませんでした。家族は医師から処置室に呼ばれ、こう言われました。
「脳波が出ないんです、反応してないんです。これで心臓マッサージとめてもいいでしょうか」
(堤敏さん)「私は、とっさに、医師に向かって、「続けてくださいよ」「なんでなんですか」、そんな言葉が出たんですけど、その時に次女が、声を詰まらせながら『お父さん、将太もう休ませてあげて、寝かせてあげて、頑張ったんやから。この子、すごい頑張ったんやから』泣きながらそういいました。その後のことは、あんまり記憶がないんです。」
その日は司法解剖のため、将太さんを病院に残し、家族は家に帰りました。
(堤敏さん)「家内と子供たちのすすり泣く声だけが聞こえていました。私は、感情が抜け落ちたかのようになって、本当に時間が止まってしまったかのように、呆然としてしまって、怒れない。泣けない、涙も出てこない。どう受け止めていいかわからない。なにがおこっているのか、なにもかもがまったくわからない、そんな状態で朝を迎えました。」