身長差を覆す 加納選手の“聖域” 相手に攻めてもらう戦術とは
齋藤キャスター:
三宅さんのゲキ推しポイントは「加納選手の“聖域”」だといいますが、どのようなことでしょうか。

ロンドン五輪 銀メダリスト 三宅 諒さん:
今回の試合は「身長差をどう覆すか」というところがカギになりました。フェンシングは「ピスト」と呼ばれる長さ14メートルの細長いコートで戦うのですが、加納選手は終始ピストの後方あたりで戦っていました。ここが加納選手の聖域です。
フェンシングの種目の一つ「エペ」は幅14メートルのコート上で、お互いが離れてしまうと点数にはならないのですが、基本的にお互い好きなところに行っていいとされています。
ポイントなのは「どのように近づくか」です。エンドラインと呼ばれる14メートルの一番端っこまで追い詰められるとこれ以上、下がることはできませんので、いかにして相手に攻めてもらうのかがカギとなります。
加納選手は直接攻撃をしてしまうと、やはり身長差で守られてしまうので相手に攻めてもらうのです。つまり下がらせないのです。攻めようと思っている人は下がらないので、そこを加納選手は突然飛び出して反撃の隙や、迎撃するタイミングを生み出したのが今回の勝因となりました。
井上キャスター:
映像で見ると加納選手がやり込められているように見えました。
ロンドン五輪 銀メダリスト 三宅 諒さん:
実は加納選手がボレル選手に「来てみなよ」という戦術だったということです。
2008年の北京オリンピックで太田雄貴選手が銀メダルを獲得し、『フェンシングといえば太田雄貴』というイメージがありました。しかし今回、個人と団体両方で金メダルを獲得する選手が現れたことで、フェンシングの第2章が始まったなという感じがします。
井上キャスター:
日本ではまだまだフェンシング競技の環境が整っているとはいえない状況ですが、レベルは格段に上がっています。
ロンドン五輪 銀メダリスト 三宅 諒さん:
そうですね。加納選手は身長というハンディキャップを、どう覆すかというのを常に考え続けてきました。自分が導き出した戦略をぶれずに戦ったことが勝因に繋がったのだと思います。
ホランキャスター:
金メダルの瞬間、どのような声を上げましたか?
ロンドン五輪 銀メダリスト 三宅 諒さん:
「わっ」です。もう加納選手が圧倒的でした。立ち上がりからボレル選手が加納選手の陣地に行くのを嫌がっているのが明らかにわかりました。ボレル選手としては「もうこれ以上できることがない、でも点数を取りに行かなくてはいけないから加納選手の“聖域”に踏み込んでいくしかない、でもやられてしまうな」という感じでしたね。
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<プロフィール>
三宅諒さん
ロンドン五輪 フェンシング 男子フルーレ団体銀メダル
日本パラフェンシング協会理事