年に一度、新しい世界遺産を決める国際会議=世界遺産委員会がインドのニューデリーで開催中。会議にオブザーバー参加している「世界遺産」番組スタッフによる、現地レポートの三回目です。
新規登録を目指す世界遺産候補の審議の二日目、7月27日は冒頭に日本の「佐渡島の金山」の審議が行われ、無事に世界遺産に登録されることになりました。その瞬間の様子を前回のリポートでお伝えしたのですが、その後も続々と新しい世界遺産が決まりました。レポートの第三回は27日の審議の続きです。
世界遺産委員会「超高速」で進む審議
まず「佐渡島の金山」の後に審議され、文化遺産として登録されたのが中国の「北京の中軸線:中国の首都の理想的秩序を表す建造物群」。

かつて北京は城壁で囲まれた都市だったのですが、その一番外側の城壁=外壁の南にある永定門から北へ。前門大街を通り、天安門広場を抜け、皇帝の暮らした紫禁城(現在の故宮)へと、北京の南北を貫く中心軸に築かれた、明朝、清朝、それ以降の歴史的建造物で構成されています。
続いて登録されたのが、タイの文化遺産「プー・プラ・バート、ドヴァーラヴァティー時代のセーマ石の伝統の証」。

ドヴァーラヴァティーは7~11世紀に仏教を信仰したモン人の王国で、聖俗の境界線に置かれたのが「セーマ石」です。板状の石碑が林立する様子は、ちょっとヨーロッパの巨石文化と似たような感じがします。
当初の予定では27日午前の審議は、このタイまでだったのですが、インドの議長は相変わらず「超高速」で審議を進めていきます。

で、新たに登録されたのがロシアの文化遺産「ケノゼロ湖の文化的景観」。木造の教会が建つ伝統的な農村集落が数多くあり、先住民の森林文化と伝統的なスラブ人の畑の文化が融合して生まれた文化的景観です。
続いて登録されたのは、ケニアの文化遺産「ゲディの歴史地区と考古遺跡」。

10世紀から17世紀にかけて東アフリカ沿岸の交易で栄えた都市・ゲディの遺跡。アフリカ沿岸の各地とペルシャおよびその他の地域を結んだとされます。
このあと昼休みを挟んでかなり時間をとって審議されたのが、南アフリカの「人権、解放、和解: ネルソン・マンデラの遺産群」。

アパルトヘイトと戦ったマンデラと20世紀の南アフリカの政治史に関わるもので構成されていて、ICOMOSの事前評価は「佐渡島の金山」と同じで、「世界遺産に登録」ではなく「追加の情報が必要」という二番手のものでした。

しかし審議の結果、最終的に21の委員国すべてが「登録すべきだ」という意見で、事前評価をくつがえして新規登録となりました。
そのあとマレーシアの新しい文化遺産になったのが「ニア国立公園の洞窟群の考古学的遺産」。

ボルネオ島の西海岸近くにある巨大な洞窟群で、先史時代の岩絵や、船の形をした埋葬地など、5万年にわたる熱帯雨林と人間の関わりの記録が残っているとされます。
続いて登録されたのが、ドイツの文化遺産「シュヴェリーン湖の邸宅群」。

ドイツ北東部の湖畔に建つ建築群です。19世紀にメクレンブルク=シュヴェリーン大公国の首都であった場所で、大公の宮殿や領主の邸宅、運河、池など湖の景観とのアンサンブルが美しいところ。

登録決定後にドイツ代表団が謝辞のスピーチをしたのですが、代表団のメンバーはすべて女性でした。
実は、ここまでで27日に審議予定していた案件は終了。翌28日に予定していたものの審議に入りました。
「このペースだと、今日中に新規登録候補の審議は全部終わってしまうかも・・・」
と思い始めたくらい、高速で審議が進んでいきます。