24の新しい世界遺産が誕生、事前評価をくつがえしての登録も
そして新たに世界遺産になったのがイタリアの「アッピア街道 レジーナ・ヴィアルム」。

レジーナ・ヴィアルムとは「街道の女王」という意味で、古代ローマ人はアッピア街道をこう呼んでいたとのこと。全長800キロ以上あり、古代ローマの最も古く、最も重要な街道です。22の構成資産があり、道路、凱旋門、浴場、劇場、水道橋、運河など当時の高度な技術力を示しています。
続いて登録されたのが、サウジアラビアの文化遺産「アル・ファウ遺跡地域の文化的景観」。

アラビア半島の古代貿易ルートに位置する遺跡地域で、先史時代からの約12,000の考古遺跡が発見されています。旧石器時代と新石器時代の道具、キャラバンサライ、オアシスと古代の水管理システムの遺跡などです。
このあと、ルーマニアの2つの候補の審議が始まりました。
まずは「トゥルグ・ジウのブランクーシの記念作品群」。

抽象彫刻の先駆者のコンスタンティン・ブランクーシによって、第一次世界大戦中にトゥルグ・ジウの街を守るために亡くなった人々を追悼するために作られた作品群です。近代の彫刻を軸とし、さらに戦争などの記憶を留める「記憶の場」という世界遺産の新しいテーマも踏まえたもので、文化遺産としての登録が決まりました。
次が同じくルーマニアの「ローマ帝国の国境線―ダキア」。

ダキアはドナウ川の北側に位置する唯一のローマ属州。ローマ軍団の要塞、砦、土塁、監視塔、街などの遺跡が残ります。ローマ帝国の国境線としては4件目の世界遺産となりました。
最後に審議されたのが、イランの「ヘグマタネ」。

イラン北西部にある古代遺跡で、紀元前7世紀から6世紀のメディア文明の遺跡が残っています。後にアケメネス朝、セレウコス朝、パルティア朝、サーサーン朝の統治者の夏の首都ともなりました。これはICOMOSの事前評価は「佐渡島の金山」よりもさらに一段階低い「登録延期」というものでしたが、審議が始まるとカタールとカザフスタンから「世界遺産に登録」という修正案が出され、賛成多数で登録が決まりました。
というわけで、本当に28日に予定していた審議も終えてしまい、今年の新しい世界遺産の審議は一日余らせて終わりました。
新たに19の文化遺産、4つの自然遺産、1つの複合遺産、合わせて24の新しい世界遺産がニューデリーで誕生しました。
インドの議事進行は超高速でしたが、審議するべきところでは時間を取ってしっかりやっており、「これはみなさん異議なしで登録だろう」というものは速攻で採決するなど、メリハリのついたものでした。
ただあまりに進行が早いので、内容に追いついていくのが大変でした・・・
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太