悪質な買収先を見抜くには? 仲介会社に責任はないのか
小川彩佳キャスター:
今回のようなケースについて、専門家は「吸血型のM&A」と表現していました。真山さんは小説「ハゲタカ」で、まさに企業買収を描かれていましたが、当時と今を見比べて照らし合わせたとき、どのように映りますか。

小説家 真山仁さん:
「ハゲタカ」はバブルの頃の話で、倒産寸前の企業をどう買収するか、生きるか死ぬかというぐらい深刻なときなので、割と詐欺に近いような騙され方をして会社を乗っ取られた例はよくあります。
しかし今回は、余裕のある健全な会社が後継者をどうするかという類の相談をし、結果的には罠にはまったような構図になっています。
一つだけ大事なのは、M&Aには企業の規模は関係ないということです。大きい企業だけではなく、やはり中小企業でも専門家や法律家、ファイナンシャルアドバイザーといった人たちのアドバイスがいります。
売る側はちゃんと専門家を雇いながらもお金の余裕を持たなければいけないという、教訓という言い方はよくないかもしれませんが、その覚悟がいると思います。
藤森祥平キャスター:
そもそもいろいろな論点があると思いますが、結果的に騙した側、買い手となったルシアン側はいろいろな約束を守っていないという点で、法的に責任を問われないのでしょうか。
調査報道部 岸将之 記者:
取材すると、ルシアンについては警察に被害の相談をしている企業もあるということです。

一方、取材を進めると気になったのが、ルシアン社側から企業の紹介依頼を受け、ルシアンに対して金砂郷食品を紹介した、間に入っている大手仲介会社の責任です。
金砂郷食品の永田社長は今回、上場している大手仲介会社にルシアンを紹介されて売却を決めたと証言しています。仲介会社はルシアンの実態を知らなかったのか、また調べなかったのか、疑問が残ります。
この仲介会社に取材をしたところ「個別の案件には答えられない」と回答しています。しかしルシアンの被害に遭った企業の多くは、仲介会社の責任を問いたいと悲痛な声を上げています。
藤森キャスター:
中小企業庁もこういう問題を把握し、対策に向けて議論を始めているようですが、いい加減な形で紹介するような会社を放っておくわけにはいきません。対策はあるのでしょうか。

小説家 真山仁さん:
そもそも仲介会社は、M&Aを仲介するだけが仕事です。買う側も売る側も、それぞれ専門家を独自で雇ってやらなければいけませんが、お金がかかるので、そこを全部仲介会社に依存しているところに問題があります。
中小企業者もおそらく、M&Aとはどういうものかわかっているところが少ないです。支援の仕方を規制すればいいと思っているのですが、会社同士の契約書の問題になるとなかなか違法を問えません。
となると、やはり売る側の中小企業に「専門家をもっと積極的につけましょう」「場合によってはお金の支援もしましょう」とアピールしてあげる。
逆に中小企業側は、金融機関や中小企業庁にもっと積極的に相談しないと、これは誰にでも起きると思っていただかないといけないと思います。
小川キャスター:
専門家が「氷山の一角なのでは」という指摘をされていましたが、まだまだこうしたケースがあるという。
小説家 真山仁さん:
本当にこれから、こういうことは次々起きてくると思います。現実問題、後継者がいませんので。
藤森キャスター:
そういう弱みにつけ込んでくる仲介業者も多いと思います。
小説家 真山仁さん:
そして、おいしい話には絶対に罠があると思うべきです。
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<プロフィール>
真山仁さん 小説家
企業買収や合併(M&A)の舞台裏を描いた「ハゲタカ」を執筆
【TBSインサイダーズ】
中小企業M&Aの問題や、様々な内部告発の情報提供を「TBSインサイダーズ」で受け付けています。皆さまの情報をお寄せください。














