――過覚醒がうつを引き起こすんですね。夏は過覚醒になりやすいのでしょうか?

「実は、過覚醒は夏の暑さと関係があります。体温調節をつかさどる自律神経は、5℃以上の急激な気温変化に対処できないため、それが繰り返されると、体温を下げる交感神経と体温を上げる副交感神経のバランスに異常をきたします。つまり、夏の暑さや汗もストレスなので、普段の生活よりも与えられるストレスが底上げされてしまっているのです。

なので、普段からバロメーターが振り切れるギリギリのストレスを感じている人にとっては過覚醒、そしてうつ状態になりやすくなります」

過覚醒になると、口が乾いたり、疲れが取れない、不眠や食欲低下、そして肩こり、頭痛、吐き気等の症状が出てくるという。

立川院長によると、暑さに疲れてきた8月上旬ごろから「疲れやすい」「よく眠れない」「朝起きられない」などと受診する人が増えるといい、猛暑や気圧変動が大きい年に患者数が増加する傾向にあるという。

似ているけど違う…夏うつと夏バテの違いは?

――疲れが取れなかったり、食欲が低下したり…「夏バテ」と似ている気がしますが、違いは?

「違いは、不眠の質です。夏うつの特徴である過覚醒が起きていると、ずっと頭がリラックスできないような感じになります。夏バテの『疲れて眠れない』『寝苦しい』というのとは違い、覚醒しているから眠れないという特徴があります。当然、寝付きが悪い入眠困難もあります。

また、寝ても交感神経が高まった状態なので些細な物音等で起きてしまったり、熟睡できず朝から体がだるく感じます。早朝覚醒も特徴です」

ほかにも、過覚醒の特徴としてあげられるのが感覚の鋭敏化だという。全ての感覚が異常に過敏になってしまい、通常の痛みをものすごく大きく感じたり、疲れもひどく感じてしまう。

それだけでなく、人の表情などを鋭敏に感じてしまい、今までストレスとして感じてこなかったことも気になり、些細なことにもストレスを感じるようになって脳が疲弊⇒うつ状態になってしまうという。

立川院長によると、動悸が出るのは過覚醒のサインだといい、放っておくとうつ状態になる危険が高いというので、注意が必要だ。