小池知事が3選を果たした東京都知事選挙。過去最多の56人が立候補し、異例の選挙戦を繰り広げたが、テレビ局は各候補者の主張をかつてほど伝えなくなったとメディアコンサルタントの境治氏は嘆く。そして、放送法の「政治的公平」の規定に臆することなく、テレビ局は選挙報道をアップデートすべきと訴える。

「アップデートできてないのは政治とメディアだ」

少し時間が経ってしまったが、東京都知事選挙の結果を見てびっくりした人は多いだろう。小池百合子氏の当選は予想通りとして、2位が石丸伸二氏で3位が蓮舫氏だった。私は20時に速報番組を見て驚愕しながら「3位じゃダメですよね?」と思わずつぶやいた。

結果の分析記事はにすでに様々出ているのでもう必要ないだろう。私がここで取り上げたいのは、石丸氏の「アップデートできてないのは政治とメディアです」のひと言だ。私はこれを聞いた時、その言葉がガビーンと頭に突き刺さった。石丸氏はものの言い方が気になるが、この言葉は真っ直ぐ受け止めるべきと思う。いや、おっしゃる通りです。

石丸氏の意図は本人に聞くしかないが、私なりの解釈を述べたい。政治はともかく、なぜメディアもアップデートすべきなのか。そしてどうして「政治とメディア」と括られているのか。テレビ局にいる人たちは「政治と一緒にしてほしくない」と思うだろう。

だが都知事選が始まるかなり前に蓮舫氏が立候補を表明してから公示日前後まで、メディアは「小池vs蓮舫」の構図で語っていた。石丸氏が2位になるなんてまったく想定されてなかった。そこですよ。政党政治の構図でしか都知事選を見ていなかった。だから石丸氏の存在を見落としてしまった。いや、石丸2位に驚愕した私も言える立場ではないわけだが、私たちのそういう政治の見方こそアップデートすべきであり、政党軸でしか政治を見なかったから「政治とメディア」と括られてしまうのだ。

「テレビとネット」の視点でメディアを見てきたつもりの私もまったく気づいてなかったのだが、選挙に向けてYouTubeで何が起こっているかをちゃんと観察したり、政党軸を捨てて若い世代に情報収集していれば察知できたかもしれない。石丸氏は選挙のずっと前から20代から40代くらいまでの中で共感者を増やしていたのだ。

そういう下地があった上で、選挙戦では200回を超える街頭演説とYouTubeでの動画配信を組み合わせてさらに支持者を増やしていった。それに加えて、街頭演説で人々に動画配信を盛んに呼びかけた。元々の発信力が、人々の動画配信によって何百倍にも膨らんだ。YouTubeはもはや、力強い選挙活動の場となったのだ。

そうした動きに気づかなかったテレビ局は、蓮舫氏と共に今回の選挙の敗北者だ。「政治とメディア」はアップデートしないと時代に取り残されてしまう。政治には無理そうだが、メディアの方はアップデートできるだろうか?