絶対言えない…でも父の余命宣告
特に家族には絶対に言えないと思っていた。
藤山さんの家族はとても仲が良かった。
その仲を絶対に壊したくなかった。
家族に言えないまま結婚式を終え生活を続けていた中、藤山さんにある事実が知らされる。父親の末期ガン、余命宣告だった。
「このまま紹介しなかったら後悔する」
追いつめられた末のカミングアウト
藤山さんが最初にカミングアウトしたのは弟・雄大さん(33)だった。
「話がある」ー兄に呼び出された弟・雄大さん。でも兄はなかなか話を切り出そうとしない。「カミングアウトだ…」そう思った。兄のいない所で「もしかしたら男性が好きなのかもしれないね」と家族で話をしていた。
藤山 裕太郎さん:
「付き合っている人がいるって言ってたんだけど、男の人なんよね…」
弟・雄大さん:
「なるほどね、いいんじゃない」
兄の告白に、雄大さんはできるだけ「普通に」応じた。しかしその後、既に結婚していること、結婚式も挙げたこと、家族に迷惑をかけたくなくて言い出せなかったことを聞いて涙がこぼれた。悔し涙だった。
雄大さん:
「もっと早く話を聞いていたら、みんなで結婚式に駆け付けたのに」
家族に心配をかけまいと、男性を愛した事実を隠してきた兄。その優しさが兄自身を苦しめていた。胸が締め付けられた。自分が想像していたより、何倍も何十倍も、兄の苦しみは深いことを初めて知った。
母親は泣いていた
2023年8月、父親にも松浦さんを紹介した。父親の反応は意外なものだった。初めて会う松浦さんの手を、2回強く握って言った。
「息子になってくれてありがとう」
母親は泣いていた。
「つらかったやろ。もっと早く言ったらよかったのに」
藤山さんの家族は、息子の「心」「生き方」、そしてパートナーの松浦さんのことも受け入れてくれた。
「素敵なおうちの一員になれた」
これまで味わったことのなかった安らぎと喜びを感じたという松浦さん。
そして2人は尼崎市を離れ、藤山さんの地元・長崎県への移住を決意した。