低価格競争からの脱却、業態変更
負債の整理を進めるとともに、まず手掛けたのは、「安売り」戦略の見直しです。当時、周辺ホテルとの価格競争の影響で宿泊料が下がっていて、平均単価は5000円程度。利益がほとんど出ていませんでした。
そこで地元の飲食店とタッグを組み、夕食を付けた1泊1万円のプランを作りました。当時の国の全国旅行支援事業を利用すれば、利用客は5000円で1泊2食付きとなります。この単価向上策で、当面の運転資金の確保ができるようになりました。
こうした営業努力を続けながら、ホテル自体の改装の検討を始めました。様々な専門家が加わり、1年かけてコンセプトを練り上げました。

日名子社長:
「駅前という立地と温泉をどういかすのか、今の客層から広げるためにはどういうコンセプトがいいのか、結構そこに時間がかかりました。当時のビジネスホテルからどうしたら生き残れるか。今あるものを残しつつ、いまどきのホテルになるようコンセプトを練りこみました。地域に根差したホテルでありたいという、自分たちの思いを形にしてもらう言語化の作業でした」
リニューアル工事を計画していた時に、補助上限額1億円・補助率2分の1という観光庁の補助金が使えるようになったことも後押しとなりました。補助金を活用して当初の計画よりも大規模な改装を実施することができました。

リニューアルの結果、女性やカップル、ファミリー層の利用者が増加し、1室あたり平均客数が1.1人から1.4人に向上。客室単価も1万円以上に。男性客がメインのビジネスホテルから地元住民と旅行客が集うライフスタイルホテルへと生まれ変わりました。
日名子社長:
「金融機関が支援としてホテルの運営に携わる人材を割けるかというと無理だと思います。今回、大分ベンチャーキャピタルなどには本当に手となり足となりというぐらい支援をいただきました。私の考えていることの相談相手になり、実現化に動いてくれました」
「大きな企業であればいろんな人材がいて相談できるかと思うんですが、うちのような家業のような会社は人材不足で専門的な知識に弱いと思います。当社に限らず小さな企業にとってはそういった心強い味方がいることが大切だと思います」

倒産寸前の状況から4年かけて立ち直ったホテルアーサー。今後は支援がなくても自立していける会社にしていきたいと日名子社長は語ります。
日名子社長:
「あくまで結果論かもしれませんが、真面目に商売していたのが良かったのかもしれません。他社を押しのけて商売するようなことは性格上、私も父もできなかったですし、地域のために堅実にやってきたつもりでした。自分ではどうにもならない状況に陥った時、いろいろな方が支援してもらっていると本当に思いました」
「でも、会社は行き当たりばったりじゃダメですね。計画を立てて実行するとか、検証するとか、自分たちの強みや弱みをしっかり把握して、その強みをしっかり伸ばしていく。弱みを少しずつでも減らしていく。そういう努力を常に、週単位、月単位とかでやっていかないといけないですね」
(取材・OBS大分放送 古城秀明)