ややこしい「(警戒レベル●相当)」も無くなる方向
一連の見直しの中では地味だが、情報を伝えるメディアの立場で、筆者が“朗報”と受け止めている動きがある。
現在、警戒レベルや警戒レベル相当情報について放送で扱う際、アナウンサーや気象キャスターは、例えば
「■■市が警戒レベル4の避難指示を発表(発令)しました」
「△△地方に警戒レベル4相当の土砂災害警戒情報が発表されました」
などと伝える。一方、
「△△地方に警戒レベル4の土砂災害警戒情報が発表されました」は、明らかに間違っている。
市町村が住民に向けて出す避難情報はレベルそのものなので、緊急安全確保=レベル5、避難指示=レベル4、高齢者等避難=レベル3だ。ところが、気象庁や国土交通省等が発表する気象に関する防災情報は、大雨特別警報や氾濫発生情報=レベル5相当、土砂災害警戒情報や氾濫危険情報=レベル4相当、大雨警報や氾濫警戒警報=レベル3相当と位置付けられている。なので「警戒レベル4の土砂災害警戒情報」は正確性を欠いた表現となる。
だが、これらの違いがわかるだろうか。
土砂災害警戒情報はレベル4ではなく、あくまでレベル4相当。住民に行動を促す避難情報=レベルなのに対し、気象に関する防災情報は、そのレベルに相当する状況であることを伝えるという設定になっているためだ。
運用する側の論理としては厳密にはそうなのだろうが、情報の受け手にとっては非常にややこしく、理解が追いつかない。
気象庁が実施した前述の一般市民へのアンケートでも、「警戒レベル相当という言葉が分かりにくい」「相当が付くと緊急度が薄れる」などの声が寄せられたほか、市町村からも「『警戒レベル』と『警戒レベル相当情報』との区別は住民にとっては難しく、混乱を招く場合もあると感じている」との指摘があった。
検討会ではこうした一般の人々の受け止めを重視し、「警戒レベル」と「警戒レベル相当情報」との関係について解説資料等には明記するものの、情報名に「(警戒レベル●相当)」は付けないことを決めた。
この決定に、警戒レベルを主導している内閣府の幹部が会場で苦い顔をしていたのが印象に残っている。
これにより、警戒レベルのわかりにくさを助長していた原因の一つが取り除かれるのではというのが筆者の率直な感想だが、一方で「警戒レベル(避難情報)」と「警戒レベル相当情報」とでは、発表されるタイミングや対象地域が必ずしも一致しない。そういう点も併せてメディアとしてしっかり伝える必要があると強く感じている。
ここまで第1回と第2回では、警戒レベルに紐付く〈警戒レベル相当情報〉を中心に情報体系と情報名の見直しの方向性を紹介してきた。最終回となる第3回では、警戒レベルに直接紐付かない〈警戒レベル相当情報以外の情報〉に関する動きを取り上げるとともに、防災情報の理想像についても考えてみたい。
〔筆者プロフィール〕
福島 隆史
TBSテレビ報道局解説委員(災害担当) 兼 社会部記者(気象庁担当)
日本災害情報学会 副会長
日本民間放送連盟 災害放送専門部会幹事
気象庁「防災気象情報に関する検討会」委員