46歳になった今、諦めずに小説を書き続ける理由

——早見さんは、言葉の力や活字のどこに可能性や魅力を感じていらっしゃいますか?

僕は活字そのものより、物語というものに救われてきた人間であると思っています。これまでたくさんの映画やドラマを見てきて、手垢のついた言い方をしますが、自分自身と向き合わざるを得なかったのは、間違いなく僕にとっては文字であって、小説でした。

僕の感覚では、「他者のことがまるで想像できない」っていう人たちが、年々増えていっていると思うんです。小説というのは、他者である主人公の人生を追体験できる唯一のメディアだと思っています。ちょっと乱暴かもしれないですが、日本中の人がいまより少しずつ小説を読むようになったら、いまより少し他者に優しい、いまより少し息の吸いやすい社会が出来ると思っています。それをわりと本気で信じていて、だから46歳にもなって諦めずに書き続けている気がします。