陸上競技の日本選手権(6月27~30日、新潟)が開幕。男子3000m障害の青木涼真(27、Honda)が初日の27日にパリ五輪代表入りを確実にした。
昨年の世界陸上6位入賞の三浦龍司(22、SUBARU)がすでに代表に内定している種目。三浦は日本選手権への出場を回避したが、昨年の世界陸上ブダペスト14位の青木が8分24秒21で初優勝した。2位の柴田大地(19、中大2年)が8分24秒68の学生歴代2位をマークした。
青木はパリ五輪参加標準記録の8分15秒00には届いていないが、Road to Paris 2024(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)で安全圏につけている。今大会の優勝で7月上旬に代表に選ばれることが確実になった。
記録よりも勝つことを優先したレース展開
勝負優先のレース展開になった。2000mの通過が5分42秒と、そこまで速いペースではなく、残り2周時点でも青木、柴田、新家裕太郎(23、愛三工業)の3人の集団が崩れなかった。青木が勝負に出たのは残り200m付近。先頭の新家に並び、前に出た。最終障害で新家に並びかけられたが、フィニッシュ地点までのスプリントで青木が力の違いを見せた。
青木が勝負優先のレースに徹したのは、準備段階で不安があったからだった。
「春の米国のレースで標準記録を切れると思って、そこで(練習を)無理してしまったみたいです。左のアキレス腱の痛みがとりきれず、かばって走って右脚にも痛みが出たり。体のバランスが整っていない状態で日本選手権を迎えてしまいました。標準記録を狙える状態ではなかったですし、日本選手権のタイトルを取ったことがなかったので、それだけを目指して走りました」
その状態でも想定通り、負けない自信があったラスト勝負に持ち込んだ。
「自分の持ち味はある程度は出せた」と自己評価をした後に、「レース終盤まで引っ張ってくれた新家君や、大学生の柴田君の好走があったので、自分の最後のスプリントを出せました。最後の1周で10mくらいの差であれば、逆転できる自信はありました」
スプリントは以前からの武器だが、3年連続で米国のバウワーマンTCへ武者修行に行っている成果が、スピードに表れているという。「今年の春、ボストン室内で日本記録も出すことができました」。種目は1マイル(約1609m)で実施頻度の少ない種目だが、1500mの通過が3分39秒12と、屋外の自己記録を上回った。日本のトップレベルと言えるレベルのスピードを身につけていた。そして競技以外の面の効果も大きいという。
「日本の競技生活はスタッフがやってくれることも多く、本当に恵まれています。アメリカに行ったら身の回りのこと、食事を自炊したり移動手段を確保したり、全部自分でやらないといけません。そういった部分の人間的な成長が競技力の向上にもつながっています。今は(世界トップレベルのバウワーマンTCの選手たちに対して)勝てると思える選手も出てきましたし、自分も一応世界陸上の決勝に進出している選手なので、初めから負けていると思わず向かうことができています」
トレーニング面での工夫もあると思われるが、青木は駅伝も含めて失敗レースがほとんどない。安定した強さは青木の大きな特徴だ。

















