民主派政治団体の演説 周囲で警察官が撮影し“監視”

大規模デモから5年、香港は今はどうなっているのでしょうか。デモの拠点となっていた場所の一つを訪ねました。

マイクを握り演説をしている男性の姿がありました。民主派政治団体の副主席、周さんです。

民主派政治団体の副主席 周嘉発さん
「いまは選挙活動もできません」

周さんの周りにはカメラで撮影している人もいます。実は撮影しているのは警察官…周さんは監視されているのです。

周嘉発さん
「(Q.5年前の香港と何か変わりましたか?)デモや集会などはコロナが終わった後もできません。悲しい現実です」

香港にはかつて民主化を求める政治団体が数多くありましたが、次々にリーダーたちが逮捕され、解散に追い込まれていきました。

周嘉発さん
「(監視は)政府の私たちに対する強い警告です。家族や友達も心配しています」

香港の今を市民に聞くと「話せません」足早に去る人も…

現在の状況に、市民はどう思っているのでしょうか。

香港市民
「(デモ後の)変化は大きいです。昔に比べて話せることが少なくなり、言論の自由が狭まりました」

香港市民
「(Q.5年前にここであったデモを知っていますか?)すみません、話せません」

多くを語らなくなった香港の市民たち…。

当局の監視はネットでも強まっています。

日本に留学していた23歳の学生がSNSで「香港独立」を主張する投稿をしたとして、2023年に香港に戻った際、逮捕されました。

日本での言動に「国家安全維持法」が適用された初めてのケースとみられ、不安が広がりました。

「私の心にある香港は死んだ」“監視社会”香港からの脱出が増加

こうした中、ある動きが急増しているといいます。

香港移民サポート会社 羅立光 社長
「移民申請数はデモの前と比べて20倍に増えました」

香港からの脱出です。抗議デモが厳しさを増した5年前から、移民の依頼が増えているといいます。

羅立光 社長
「香港の政治状況が不安定なことを心配し、海外に移民したいと思うようになったのです」

実際、台湾に移民をした男性に話を聞くと「香港は『監視社会』になってしまった」と嘆きます。

香港から台湾に移民した人
「市民がお互いを通報するようになり、人と人が信頼しないようになりました」

とはいえ、生まれ育った故郷を離れることに迷いはなかったのでしょうか。

香港から台湾に移民した人
「移民せずに香港に残ったとしても同じです。なぜなら、私の心にある香港はすでに死んだからです」

かつて、民主化を求める声が響き渡っていた香港の街。5年が経った今、香港は重苦しい沈黙に覆われています。