
半径5メートルにできた“空洞”
土曜日の午後、華やかな服を身にまとった若者たちや旅行中の観光客でごった返す新宿駅南口改札前の歩道。古澤さんの姿をみて足を止める人はほとんどいない。一瞥して何事もなかったかのように歩き去るか、存在すらも視界に入っていないように通り過ぎる人たち。古澤さんの周囲半径5メートルにぽっかりと空洞ができていた。古澤さんの言葉の射線は、日本政府、そして日本人にも向けられる。

「我が国はG7先進7か国のひとつであるにもかかわらず、多くの日本人はガザ地区の惨状に対し無視を決め込み、他国で起こってることには関心を払わず、声を上げても意味がない。そして『戦争反対、人権侵害を止めろ』と声を上げたところで、何の効果もないと諦め続け、沈黙を続けているようですが、国際社会に生きる人間として沈黙するということは、このイスラエルの戦争犯罪に対し加担している。容認していると言われても文句は言えない状況です」

「あえて異物として存在するように」
アメリカやイギリス、日本の大学生たちが抗議の声を上げている。連帯しよう。そう訴え続ける古澤さんの言葉は、温んだ休日の街の空気に、かすかな振動を起こしているようだ。だが日本人からの反応は薄い。手ごたえをどう感じているか質問すると、意外な答えが返ってきた。
「道行く人に『ぜひとも共感してくれ』という気持ちでやってなくて、自分という異物、鬱陶しい存在、『戦争反対』とか言ってるうるさい存在になりたいんですね。そのことによって、その人の脳裏に刻み込んでもらいたい。ただ平和的にやってると記憶に残らないと思う。あえて異物として存在するようにしてます」