上士幌町 竹中町長に聞く 消滅可能性自治体からの脱却

――消滅可能性自治体からの脱却。どう受け止めているのか。

上士幌町 竹中貢町長:
これまでの取り組みの成果が出た。日頃のまち作りの成果の結果だと思っている。そもそも人口減少の課題を考えたときに、大きく2つあって、1つには、子育て教育がしっかりできている環境になければ、上士幌町に住んでもらえない、あるいは魅力を感じてもらえない。それから朝、多くの車が上士幌町に来ている。仕事に来るが、夜になったら閑散とするのでこれはまた非常にもったいない。そこを探っていくと、住宅環境が非常に乏しいので、そこにも徹底して手厚い支援をしてきた。弱点を克服するための支援だが、それがいろいろなところで取り上げられ、評価をもらい、定着するようになったということが最も大きな要因だ。

――消滅可能性自治体は全国に744もある。町長の立場から見て、何をするのが一番大事か。

上士幌町 竹中貢町長:
その町をよく知るということだと思う。よく町に何もないという話が出るが、みんなそれぞれ伝統や文化、産業等もあるのでそれをしっかり磨いていく。若者が来ても違和感なく住民と接することができたり、田舎ではあるが、次世代の技術、ドローンや自動運転バスなど最先端な取り組みが若者に夢を与える。こういう複合的な取り組みの結果が時間をかけて評価をもらったと思っている。さらに嬉しいことに昨日(2024年5月31日)国の方から、自動運転バスに運転手が乗らなくても走行可能という許可が下りた。この先、無人のバスが町を走るという日本でも最先端の取り組みがここから始まっていくので、技術者にとっても非常にわくわくするような町だと思ってもらえる。

――ローカルな視点と、最先端の技術やSDGsといったグローバルな視点と両方入っている。竹中さんの頭の中ではどういうふうに繋がっているのか。

上士幌町 竹中貢町長:
上士幌町の魅力は自然や環境、第一次産業。これをしっかり活かしきる。さらにSDGsやカーボンニュートラルという世界的な課題に最先端で取り組んでいる町でもあると思っている。田舎ではあるが、実は世界的な課題に挑戦する最先端の町だと誇りを持ちながら町作りを進めている。これは私たちだけの町だけではなく可能性は全ての地方にある。地方から日本を変えていくということになると思っている。

上士幌町を取材したTBS経済部の田中記者にも話を聞いた。

――2005年から移住者は249人。人口の5%だが、仕事は現地にあるのか。

TBS経済部 田中優衣記者:
町の制度で、地域おこし協力隊があり、町で働ける仕組みがある。町民や移住者の生活を少しでも良くするように考えられていて、そこが魅力となって外から入ってくる方たちも増えたのではないか。

――町おこしの中にその雇用創出する仕組みも仕掛けもあるということか。実際に現地に行ってみたら、何が一番印象的だったか。

TBS経済部 田中優衣記者:
町と技術のギャップ。空港から車で1時間強の距離にあるが、道中、山が綺麗だったり、牧場が広がってたりと北海道らしい景色が広がっている一方で、VTRにもあったように、自動運転バスが走ってたりドローンを活用されてたりとあまり東京でも見ないような最先端の技術が広がっているところに町民も、移住者も魅力を感じている。

――SDGsにも熱心で、バイオガス発電もあったが、上士幌町は脱炭素にも積極的なのか。

TBS経済部 田中優衣記者:
役場にゼロカーボン推進課があり、8人ぐらいのチームで形成されている。そこにいる人たちも若い人も移住者もいて、脱炭素など積極的に取り組んでいる。町の特性を生かしたSDGsの取り組みをしている。

識者に聞く、町おこし成功のポイントとは!?

――入山さんも全国のいろんな町作りに関与されているが、みんな悩んでいる。どうすれば町おこしができるのか。ポイントは何だと思うか。

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
最大のポイントは、はっきりいうと人。何もないところでも魅力的な方が時間をかけてやっていると人が集まってくる。上士幌町はこの竹中町長。20年以上やられている。多分相当苦労されていると思う。首長はすごい重要で、いろいろなしがらみもあるし、議会が結構重要。議会から結構言われることもあったのではと想像するが、それを踏まえて長くやってきたから、竹中町長のところに人が集まってくる。こううまくいっている地域を見ると、1人か2人、キーパーソンがいることが多くて、おそらく町役場とか地元の団体にそういう人がいるのではないかと想像する。そういう人が外からいろいろな魅力的なことを引っ張っていくような相乗効果が起きているのではないか。

――最先端の技術や意識を具現化していくことが、田舎の町でもできるようになってきている。

早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏:
本当に重要なポイント。日本はいわゆる課題先進国。世界で今、最も課題がある国で、どこに課題があるかというと、地域。日本の地域が、一番世界で課題がある。逆に言うと中国はこれから少子高齢化が進むし、韓国もタイ、ヨーロッパも一気に進む。実は、日本が一番先を走っているので、ここで課題解決をすると、これが世界に展開できる。

――モデルケースにもなる。

ある意味で日本の地域は、世界で最先端。ここで自動走行やドローンをやっていくのは本当に最先端のことをしているので、そういうところに逆に若い方が惹きつけられるんだと思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』 6月1日放送より)

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<プロフィール>
竹中貢 氏
北海道上士幌町 町長
1971年 上士幌町役場に入庁
2001年 町長に就任、街の発展に尽力
2024年 消滅可能性年から脱却

入山章栄 氏
早稲田大学ビジネススクール教授
米・ビッツバーグ大学 経営大学院より博士号取得
泉温は国際経営論、経営戦略論
近著「世界標準の経営理論」