「最後の千円が10万、20万円になった経験から期待してしまった」

被告(30)は丸刈りで、黒の長そでシャツ、長ズボン姿で入廷。弁護人によると、被告は内気でおとなしい性格で飼い猫と暮らしていた。仕事は幼馴染が経営する配達業と日雇いの建設業を掛け持ちしていたという。

検察は「被告は《借金をしてギャンブルをする》ほどのめり込んでいた。事件当時、公共料金の滞納や消費者金融、複数の知人などから少なくとも約280万の借金があった」と指摘した。

弁護人:ギャンブルを始めたのは?
被告:19歳のとき。21歳ごろには毎日パチンコ・スロットをしていた。
──ボート(競艇)にも手を付けていたようだが?
2022年12月ごろから始めた。パチンコとは違い、1時間で数十万円つぎ込める。頻度はパチンコと半々くらい。
──事件直前、ギャンブルをしていた時の気持ちは?
楽しくなかったが、お金を増やさないといけないと思った。他に増やす方法が分からなかった。
犯行前日の2023年6月21日、被告は受け取った給料28万円から前借分の4万円を返済し、残りの24万円をその日のうちにギャンブルや食費等で使い果たした。その夜、パチンコ店から自宅に帰る車の中でコンビニ強盗を決意したという。
──24万円をどうしたのか?
すべてギャンブルで使った。パチンコをしながらスマホアプリでボート(競艇)に賭け、使い切った。
──どうして(ギャンブルを)止めないのか?
《最後の千円で10万、20万になった経験》から期待してしまった。
──使い果たした時の気持ちは?
次の給料日までどう生活しようかと絶望した。帰りの車内で、まとまった金のためには強盗するしかないと考えた。

裁判の中で、被告を診断した精神科の医師は「どの精神科医が見ても《ギャンブル障がい》の診断がつく」と証言。「追い込まれた状況になると心理的視野狭窄となり『金をどうにか手に入れてギャンブルするしかない』となる。常識で考えられない行動を取ることは心理学的にあり得る」と述べた。

太田寅彦裁判長は医師に対し「ギャンブル障がいの人が犯罪行為にまで至ってしまうのは仕方ないことだと考えるか?」と尋ねると、医師は「金を得るためには手段を選ばないケースもある。ただ『病気だから罪を犯してOK』ではない」と述べた。