「警察は謝らない」袴田巌さんの姉・ひで子さんと大川原社長語る“取り調べに抗う難しさ”

人質司法の問題を訴える人が、静岡県にもいる。袴田事件で再審公判中の袴田巌さんの姉・ひで子さん(91)だ。弟の無実を信じて戦ってきた。
金平特任キャスター
「いわゆる袴田事件の再審裁判はきょうで結審です。原告団がひで子さんを真ん中にして入廷するところです」
袴田巌さんは1966年、静岡県で一家4人を殺害したとして逮捕され、その後死刑が確定。しかし、2014年に静岡地裁の決定で再審、裁判のやり直しと釈放が認められた。

2023年10月、再審公判が始まったが、巌さんは長期間の勾留生活で精神を病み、十分に会話ができないことから出廷が免除された。
5月22日の裁判では、姉のひで子さんが法廷に立つことになった。

袴田巖さんの姉・ひで子さん
「巖の裁判ですので、巖は今は話はできないから、巖に代わって巖の言いたいことを申し上げるつもり」
検察は改めて死刑を求刑する一方、弁護側は無罪を主張し、ひで子さんが最終の意見陳述を行った。

ひで子さんの意見陳述
「巖は47年7か月、投獄されておりました。未だ拘禁症の後遺症と言いますか、妄想の世界におります。私も一時期、夜も眠れなかったときがありました。お酒を飲むようになり、アルコール依存症のようになりました。余命いくばくもない人生かと思いますが、弟、巖を人間らしく過ごさせてくださいますようお願い申し上げます」
袴田巖さんの姉・ひで子さん
「今日で(全ての審理が)終わりました。本当にほっとしております。もう1回(裁判に)行くだけでおしまいだよと言って、(判決日の)9月26日になったら巖に説明しようと思っています」

ひで子さんはこの日、大川原化工機の大川原社長のもとを訪ねた。
袴田事件と大川原化工機事件のずさんな捜査の背景には、人質司法がある。ひで子さんと大川原さんはその実態を公の場でともに語ることで、励まし合ってきた。
2024年2月には、大川原さんが静岡市で行われた袴田さんの支援集会に参加した。

金平特任キャスター
「大川原社長は、なぜ袴田さんの集会に行ってみようと思ったんですか」
大川原社長
「集会に出席することで実際にどうだったかっていうのをより詳しく知りたい。暗い雰囲気でやっているかなと思ったら、やはり袴田さんの明るさがあってね」
袴田巖さんの姉・ひで子さん
「私は泣き言を言うとか愚痴を言うとか、そういうことは言わないと思って戦っていたんですよ」
警察の取り調べに抗う難しさをこう語った。

大川原社長
「我々の親しい人たちの調書の内容を見ると、こういうことを言うわけがないのに、我々が法を犯したんだと調書に書いてあるんです」
袴田巖さんの姉・ひで子さん
「犯罪者にしちゃってる。普通の人は負けちゃう、泣き寝入りしてる。やっぱり真実は勝つですよ。へこたれんでよかったね」
大川原社長
「認めないで良かった」

人質司法がもたらした悲劇。2人は警察が過ちを認めて謝罪しなければ、再び繰り返されると訴える。
大川原社長
「謝らないんですよ彼ら(警察)は」
袴田巖さんの姉・ひで子さん
「もっと素直になってもらわないと困るよ」
大川原社長
「我々に対して嫌疑を作って、大きな被害を与えて、仲間も1人亡くなった。まずは素直に謝ってそれを直す形にならないと、いつ他の人もそういうことになるかわからない」