リニア工事と大井川の水をめぐる問題で、打開策として提案されているJR東海の「田代ダム案」。8月8日に現場を視察した静岡県の川勝知事は9日の会見であらためて「全量戻し」と「田代ダム案」は別物と強調しました。
9日の定例会見で川勝知事に質問が集中したのは「田代ダム案」のとらえ方でした。
<静岡県 川勝平太知事>
「JR東海としては全量戻しとのかかわりということは(JR東海)本人の思い込み。ひょっとすると話がトンネル絡みになるかもしれませんが、目下のところは別の話」
大井川の水資源への影響が懸念されているリニア工事。トンネル工事によって県外に流出してしまう水の「全量戻し」を求める県に対して、JR東海は「東京電力が田代ダムで取水している発電用の水を抑えてリニア工事による流出分と同じ量だけ大井川に還元する」案を示しています。
8日の視察では、田代ダムの発電施設がある山梨県早川町の町長も同行しました。田代ダム案を提案した1人です。
<山梨県早川町 辻一幸町長>
「あえて発電所の電力が少なくなっても、大井川の水を確保しながら第二段階、第三段階へ工事が進んでいくことを期待しながら川勝知事に提案した」
しかし、川勝知事の「田代ダム案」のとらえ方は視察をしても変わりませんでした。
<静岡県 川勝平太知事>
「(田代ダム案は)皆が喜びますので広い意味での地域貢献であると私は考えている。(Q.県が求める全量戻しの案にはなりえるか?)なりえません」
<JR東海 宇野護副社長>
「地域貢献という意味合いは私どもとしては持っていませんが、全量戻しの対応の一環ということ」
トンネル工事中に流出する水、そのものを戻さない限りは「全量戻し」にならないと考える川勝知事。JR東海への注文は、これだけにとどまりませんでした。
8日は、リニア工事で予定されている残土置き場も視察。360万立方メートルの残土を7階建てのビルほどに盛り土する予定で、JR東海は熱海市で起きた土石流の教訓を踏まえて排水などの対策を重点的に施すと強調しましたが。
<静岡県 川勝平太知事>
「大規模地震があった時に深層崩壊が起こって平坦な土地になってきた歴史があるので、それを前提にしたシミュレーションでないとダメだということ。私はここは不適ではないかと思います」
川勝知事は同行した専門家とともに、盛り土の予定地は何度も周囲の山が崩れている場所と指摘し、議論が必要だとしました。すべての現場で批判を繰り返した川勝知事。今回の視察を踏まえ川勝知事は10日、大井川流域の自治体と意見交換する予定です。
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