注目に人物にインタビューする「この人に聞く」。今回は、今年4月から鹿児島地方気象台のトップを務める植田亨台長です。
毎年、災害が相次ぐ鹿児島。気象の予測技術は進歩しても、「忘れないでほしいことがある」と強調します。
今年度から鹿児島地方気象台に赴任した植田亨さん(59)。茨城県出身です。1989年、気象大学校を卒業。最初の勤務地は鹿児島地方気象台で、30年ぶりに鹿児島に赴任しました。
当時、勤務していたのは鹿児島市吉野町の高台にあった観測所でした。観測機器をつけた気球を毎日飛ばし、上空の気温や風などを記録していました。
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「1989年(平成元年)7月28日、台風11号が鹿児島市を直撃。そういった災害時の観測データは重要、台風まっただ中での観測、観測用の気球が何度も破裂し観測できず、その時とても悔しがっていた上司の姿。仕事に向かう姿勢を教えてもらった」
そして鹿児島に赴任して5年目の1993年の夏…。
8・6豪雨災害。鹿児島市を中心に河川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、死者・行方不明者は49人に上りました。
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「人生の中で大きな水害に遭ったのは、8・6災害だけ。大きな印象に残っている」
鹿児島で6年間勤務した後、東京の気象庁や福岡、旭川、成田などの気象台を経て、今回、再び鹿児島へ。
鹿児島で特に気をつけてほしい災害に、火山、大雨、地震の3つを挙げます。
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「県内は桜島ほか、活発に活動している火山が多くある。特に、桜島は大正時代とても大きな噴火をしている。火山への注意、備えが大事だと思っている」
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「数年に一度大きな水害が発生。やはり大雨の注意というのも必要。南海トラフの大地震、太平洋側で津波で大きな被害が」「火山・大雨・南海トラフ大地震は特に注意したい」
毎年、災害が相次ぐ鹿児島。気象の予測や観測技術は日々、進歩しています。
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「ことしの1月に名瀬にある気象レーダー、これが新しくなり、(2種類の電波を使う)二重偏波という新たな機能が追加された」
従来は観測できなかった雨粒の形や大きさまできめ細かく観測することができるようになったといいます。
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「ことしの3月に気象庁の新スーパーコンピューター稼働。台風とか集中豪雨の予報精度の向上に努めている」
しかし、予測技術は進歩しても、「忘れていはいけないことがある」と強調します。
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「自然というのは多くの潤いと恵みを与えてくれる、時に巨大な暴力ともいえる圧倒的な力で、我々に大きな災害をもたらすことがある。自然がそのような力を持っている事を決して忘れてはいけない」
奄美地方が梅雨入りし、雨のシーズンを迎えた中、災害への備えを見直してほしいと話します。
(鹿児島地方気象台 植田亨台長)「災害に遭遇するような状況になった時、自分と家族をどう守るか、普段から考えてほしい」