サニブラウン・アブデル・ハキーム(25、東レ)と坂井隆一郎(26、大阪ガス)が、男子100mレース中にスピードを緩めるアクシデントがあった。
GGPはワールドアスレティックスコンチネンタルツアーの中でも、14大会のみに与えられた「ゴールド」ランクの競技会。今年は東京五輪会場だった国立競技場で5月19日に開催された。
男子100mは栁田大輝(20、東洋大3年)が10秒21で、東田旺洋(28、関彰商事)と0.01秒差の接戦を制した。前年の世界陸上6位入賞者のサニブラウンは、今年に入ってからのパリ五輪参加標準記録(10秒00)突破で代表が内定する。だがレース序盤で脚が攣り10秒97で8位。世界陸上オレゴンで準決勝に進出した坂井も、スタート直後に脚が攣って12秒34の9位。
注目種目のパリ五輪代表争いは、今後どう展開していくのだろう?

1日2本のレースに対応できなかったサニブラウン

まさかのシーンが国立競技場のホームストレートで展開されていた。世界陸上では22年オレゴン大会7位、昨年のブダペスト大会6位。連続で世界最速を決めるレースを走ったサニブラウンが、力を緩めて優勝争いから離されていく。アクシデントがあったのは明らかだった。だがレース後のサニブラウンは、いつもと同じ明るい話しぶりだった。

「(スタート前に)攣りそうな予感はありましたが、実際に攣ってはいなかったので、行けるかなと思ってスタートしましたが、案の定、12~13mくらいでふくらはぎと左のハムストリング(大腿裏)が攣りました。ケガをしてしまったら元も子もないので、緩めて走り切る形にしました」

実は短いインターバルで1日に2本を走ることに、どこかで不安を感じていた。だから予選でスタートのやり直しがあったとき、恨みがましい気持ちも抱いてしまったという。

「ここまで短い距離のメニューで練習してきました。長い距離をやっても本数が少なかったりしているので。それでも2本走れると思ったんですけどね。(スタートのやり直しも)オリンピックの決勝でそういう場面があったときは、しっかり行かなければいけない」

それでも予選は10秒07で2組1位。1組は向かい風もあってトップ通過の栁田は10秒31にとどまった。五輪代表に最も近い選手であることはアピールした。

100mで選手がレース途中でスピードを緩めると、見ている側はドキッとさせられる。肉離れで長期離脱を余儀なくさせられるケースも多いからだが、今回のサニブラウンは本人も話したように、すぐにレースに復帰できる状態のようだ。

今後はイタリアを拠点に、ヨーロッパの試合を転戦する。出場選手はまだ確定していないが、ダイヤモンドリーグ(以下DL)は30日にオスロ大会、6月2日にストックホルム大会が行われる。

「これからは短い距離だけでなく、120mや150mのちょっと長い距離、スピードエンデュランス(スピード持久)のメニューが(コーチから)来るのかな、と心しています。試合も毎週ではないですけど、結構出て行きます。パリ五輪も(100mは予選、準決勝、決勝と)2日連続になるので、そのくらい試合を走らなきゃダメかな、と思っています」

それらの大会でサニブラウンが標準記録の10秒00をクリアすれば、その時点でパリ五輪代表に内定する。