男子100mのサニブラウン アブデルハキーム(25、東レ)が、ゴールデングランプリ(以下GGP)で9秒台を出すと自然体で宣言した。

ゴールデングランプリはワールドアスレティックスコンチネンタルツアーの中でも、14大会のみに与えられた「ゴールド」ランクの競技会。今年は東京五輪会場だった国立競技場で5月19日に開催される。

5月16日に都内で会見したサニブラウンは「パリ五輪参加標準記録(10秒00)を今年に入って切っていません。それを出していきたい」と、GGPの目標を話した。サニブラウンが世界で戦うために必要と考えている記録や、そのためにどんなステップで状態を上げていこうとしているかを考察した。

自然体で記録を口にするサニブラウン

サニブラウンが記録的な目標を口にするとき、気負いがまったく感じられない。それがサニブラウンの強さの一端と思われる。

世界陸連が定めたパリ五輪参加標準記録の適用期間は昨年7月以降で、8月の世界陸上ブダペスト準決勝で9秒97で走ったサニブラウンは、すでにパリ五輪出場資格を持つ。あとは国内の代表選考規定をクリアすればいい。前年世界陸上で6位に入賞しているので、日本選手権の戦績に関係なく、今年に入って参加標準記録を破ればパリ五輪代表に内定する。

今季ここまで100mは3レースに出場。
3月23日:10秒02(+0.5)フロリダ州Coral Gables
4月13日:10秒04(+1.7)フロリダ州Gainesville
4月27日:10秒15(+0.9)フロリダ州Jacksonville

5月16日の会見では「運が良いのか悪いのか、ぎりぎりで標準記録を切ることができていません。GGPでしっかり出したい」と話した。0.0数秒というところで五輪内定を逃してきたことを、「運が良いのか」と言ったのは自虐的なユーモアか。それとも地元(サニブラウンは東京出身)で代表入りに挑戦できることを、チャンスととらえているのか。

いずれにしても“ここで絶対に出さないといけない”と、肩に力が入っている様子は感じられない。

陸上トップ選手たちの中には、記録的な目標を口にしない選手も一定数いる。記録よりも勝負を重視する方がモチベーションが上がったり、自分のやりたい動きに集中する方がリラックスできたりするからだ。自分にプレッシャーをかけないため、という考え方もよく聞く。それらもパフォーマンスを発揮するためには有効だろう。

だがどんなアプローチをするにしても、最終的には記録を上げることが求められる。であるならば、良い記録を出すことを最初から前提に考え、その記録を出すための努力をすること、自身のやりたい動きをすることを当然と考える。

サニブラウンが自然体で記録的な目標を口にすることは、目標達成にプラスに働いている。