「こんなつもりじゃ…」「すまなかった」基地受け入れ推進派の後悔
基地の受け入れを推進してきた島民もいる。杉為昭さんは、国からの“交付金”に期待していたのだ。
例えば、アメリカ軍の訓練を受け入れることで支給される、“再編交付金”は2024年度、28億円が決まった。
▼再編交付金(24年度)
西之表市 20億7200万円
中種子町 5億1800万円
南種子町 2億4200万円

馬毛島基地推進派 杉為昭さん
「やっぱりもう背に腹は変えられない。今、いただいている再編交付金、それから基地が完成して運用が始まれば、また基地交付金、さらにはいろんな交付金が絡んできます。そこを活用して、この種子島西之表をどうやって元気づけていこうかということに、子供たちの為に、そういうことを考えた方が理があるっていうのかな」
一方で、推進してきたことを今、悔いている島民もいる。

推進派の会長を務めた折口金吉さんだ。防衛省に直接要望書を渡すなど、積極的に活動してきた。
種子島で安納芋を生産している折口さんは、工事が急速に進み、建設関係者であふれる種子島の現状に不安を感じている。

元馬毛島基地推進派 会長 折口金吉さん
「今の状況をやったら、こんなつもりじゃ、私は。もうちょっとな、冷静にお互いして、工事も10年ぐらいかけて、徐々に市民にわかるような工事をしていくのかなと思ったら、一度に急に来たから追いつかないような状況で、責任は当然私にあって、そう思っている方々にはすまなかった」
ーーこんなに大きな滑走路と軍事基地ができるとは思っていなかった?
折口さん
「そうそう。車が通るくらいの騒音しかないとか言われたって、市民の方々はわからないところがあるんですよ。だからいざ出来てみて、B35何とかっていうのが来て、あれはもうものすごく上に上がって、訓練がもう年がら年中あるっていうから」
種子島に再編交付金が交付されて2年。恩恵を受けたのは特定の島民に偏っていて、折口さんが望んだ地元集落の活性化には程遠いという。

折口さん
「建設業がよかったというひがみもあるわけよな。市街地から離れたところにも、ある程度、恩恵があればそういうことは全然ないんだけどな」
島民の不満は地元行政のトップに向けられている。

西之表市 八板俊輔市長(2021年1月西之表市 市長選挙)
「西之表にとって種子島にとって、失うものの方が大きいと」
西之表市では3年前、馬毛島基地計画に反対を掲げた八板俊輔氏が市長に選出された。
西之表市 八板市長(2021年1月西之表市 市長選挙)
「国の計画にNOと言っている」
だが、八板氏は市長に就任すると、その立場を変え、賛否について明言を避けるようになった。

ーー反対の立場を示されてきたが、立場を変えられた?
西之表市 八板市長(2022年2月)
「国会の議決前でありますが、予算が決まって新しい局面にいたっている」
自ら掲げた基地計画反対の公約について改めてどう思うのか、八板市長が取材に応じた。

ーー政治のリーダーとして、そこは説明した方がいいのではないですか?
西之表市 八板市長
「難しいですよ。そこはもうこの何年間、私も悩んできてね、悩んで来て考えて、現実の動きの中で最善の選択というのをしていこうということで」
インタビューの間、八板市長は基地建設について明言を避け続けた。しかし、最後にこう本音を漏らした。
西之表市 八板市長
「例えばこの問題で対立している相手とも、普段仲良くしているわけですよ。一緒に農作業をしたり、或いは一緒に船に乗ったり、或いは一緒の学校で子供たちのために一緒になって作業したりするわけでしょ。地域の奉仕作業とかも一緒になって。そういうのが、この問題でぐちゃぐちゃにされたくないわけです」

西之表市 八板市長
「だから触れないんですよ。(市民は)この問題に触れたくないわけです。触れると、仲のいいあの人と、やんなくちゃいけないから。もう口利かないとこから始まるでしょ」