被害者からの示談の条件

Aさん(30代)「今回示談が成立したんですけども、被害者の方から言われた示談の条件のひとつに『今後も引き続き治療を続ける』というものがありました。それを見た時に、被害者の方の『被害に遭われる人たちを自分で最後にしてほしい』という思いをを感じたので、申し訳ないという気持ちと、自分が社会の中でそういう問題行動を起こさずにしっかり生きていくことが被害者の方への謝罪のひとつだと思っています。」

家族も含めた相談が重要

Aさんが通う施設の代表、金谷大哲さんは、再犯を防ぐためには「本人だけでなく、家族を含めた相談が重要だ」と話します。

ふくおか心理教育オフィスヒュッゲ金谷大哲代表「ご家族だけにしか分からない悩みがあるんですよね。例えば加害者が息子さんであれば、『教育の仕方が悪かったかな。家族が悪かったかな』と。配偶者の立場であれば、『もうちょっと妻としてできたことがあったんじゃないか』などさまざまです。他の機関で打ち明けるということが内容的にとてもハードルが高かったりするので、吐き出していただく場というのを提供したいということと、『どうしてこの行動が続くのか』『約束したのに、あれほど反省したって言っていたのに』『嘘をついているんじゃないか、変われないんじゃないか』そういう風な捉え方になっているご家族は案外多いので、行動パターンというのは学習だからというお話を改めてしています。これやめた方がいいと自分も家族も分かっている、だけれどもやめられないというのはひとつの学習だと僕たちは理解していて、依存症だと理解をすると病気、一方で、誤った学習パターンが身についていると考えると、学習パターンを変えるということが治療支援になってきます。病気か、誤った学習パターンが身についているか、どちらの捉え方がしっくりくるかということはその人によって決めていただいていいと思いますが、僕自身は認知行動療法を提供する上で誤った学習を違う学習に変えていきましょうと、そういった説明をすることが多いですね。」

「病気」という言葉に救われた

盗撮を「やめたくてもやめられない」と思い悩んでいたAさん。家族からの「病気」という言葉に救われたと話します。

Aさん(30代)「今回の問題行動のことを僕は自分の問題だと思うし、自分がしっかりしていなかったから、こういったことになったと思うけど、妻と母親から、『これは病気だからしっかり治療しなきゃいといけない』ということを言われて、その”病気”という言葉には救われたなと思っています。病気って結構不可抗力的な感じがして、なろうと思ってなるものじゃないし、”病気”と言ってもらえることで、しっかり「治療」という言葉とも結びつきますし、自分が悪いんですけど『絶対的にあなただけが悪いんじゃないよ』という意味を含めて”病気”という言葉は、僕が使ってはいけない言葉だと思いますが、他の人が使う言葉としてはすごく救われたなと思いましたね。」

家族との関係にも変化「悪いことも話せるように」

治療を始めてから家族との関係も変わったと話します。

Aさん(30代)「妻といろいろ話すようになりました。話す量は変わらないんですけど、治療を受ける前はいいことしか話さなかったんです。でも治療を受けてからは、問題行動をはじめとして、いろんなこと、いいことも悪いことも話すようになったかなと思います。性犯罪っていうのは誰にでも話せることではないですが、妻に関しては、治療をうけられる場所をみつけてくれたということもありますし、妻も話しやすい雰囲気を作ってくれているのかなという風にも思いますね。」