スタートもハードル間の走りも手応え十分の田中
女子は田中が13秒00(-0.1)で、2位の福部真子(28、日本建設工業)に0.09秒差をつけた。大差とまでは言えないが、この種目としては僅差とは言えない差で快勝した。スタートが、内面的なところで以前よりスムーズにできるようになったという。
「一度、高校生でアジア大会に出たときにフライングで失格になったことがあります。スタートに対してかなり苦手意識がありましたが、スタート練習を(1人で行うのでなく)誰かに手を鳴らしていただいて行ってきました。そこが良かった点ですね」
ハードル間の走りも進歩を実感できた。
「3台目から5台目までのインターバルを、足を置きに行けたというか、落ち着いて刻みに行くことができました」
スピードを抑えたわけではない。その逆で、正確な位置に接地して走ることで、ハードルから遠い位置で踏み切りスピードが落ちない。だがハードル種目の難しいところは、まったく同じ動きを続けることが難しい点にある。
「レースペースで後半もその動きをするのは初めてだったので、少し体が伸びるようになってしまって、若干減速したかなと思ってます」
冬期トレーニングの成果を出しつつ、課題も明確にできた。シーズン初めの試合としては十分な収穫があったと言える。日本記録(12秒73)保持者の福部にも、歴代2位(12秒86)の青木益未(30、七十七銀行)にも勝つことができた。
ゴールデングランプリでは織田記念に出ていなかった寺田明日香(34、ジャパンクリエイト)とも対決する。寺田は19年に日本人初の12秒台を出した選手。その前レースで寺田は13秒00(+1.4)の19年ぶり日本タイで走ったが、同じレースで田中は13秒18と当時の自己新をマークした。
昨年のゴールデングランプリは寺田が12秒86(+0.4)で優勝し、田中は12秒89の自己新で2位。昨年4月の織田記念で初めて12秒台(12秒97・+0.6)を出したばかりだったが、ゴールデングランプリの結果で自信を深め、日本選手権3位、世界陸上ブダペスト代表と成長した。
「昨年の12秒89は寺田さんのリズムに付いて行って出せた記録です。今年に関しては自力でそのくらいは出せます。現実的に、ハマればにもう少し出せますね」
女子もゴールデングランプリの外国勢が発表されていない。昨年(日本勢が3位までを独占)のように、日本勢による熾烈な優勝争いになるかもしれないが、どんなレースになっても、1年前以上の記録が期待できる。12秒77のパリ五輪参加標準記録も射程圏内だ。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















