価格が付かない“負”動産をどう動かしていくか?三つの解決策とは

23ジャーナリスト 片山薫 記者:
ただ、空き家の流通、特に0円で譲れるということはあまり知られていません。なぜかというと実は今、価格が付かない不動産を表すものとして、「負債」と「不動産」を合わせた「負動産」という言葉が結構使われています。

値段が付かないので、手数料ビジネスをやっている不動産業者は扱いません。だからこそ譲るという選択肢が出てきましたが、この「負動産」がもう少し動かないと、なかなか解決策はないのかなと思います。

小川キャスター:
この負動産をどう動かしていくのか、解決方法にはどういったことがあるのでしょう?

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
いろんなフォーラムでもお話をしていますが、まとめて三つあります。

第一に、特に地方都市もそうですが、これ以上新築の家、戸数が増えないように、都市計画をちゃんと運用しなくてはいけない。容積緩和してどんどん家を建てるというのは、必ずツケが自分に回ってきます。東京も同じですが、建てるのであれば、その分壊すというサイクルを作らなくてはいけません。

二番目が、0円も含めて、使える人間に流通させる仕組み。民間の不動産業者がやらない部分を、NPO的に、みんなのためにやるという事業を増やすことです。

三番目に、やはり車でも大きい家電でもそうですが、古いものを引き取ってスクラップにする業者の方がいてくれるので新しいものが売れます。新しい家具を買おうと思ったら、古いものを引き取ってくれないと買えませんよね。

家はこれがなく、古い家をスクラップにするという事業が成り立っていません。動脈の反対で「静脈産業」といいますが、家の静脈産業を作ることが必要です

実際に地方では、古い民家なんかだと中にアンティークがあったり、ばらした居酒屋の中に、内装に使えるような古い立派な柱が出たり。そのような古い木造家屋のほうが実は価値があって、むしろ都会の鉄筋コンクリ住宅のほうが価値がありません。

これを、一定の公費をもらって取り壊して、実際にリサイクルできるところはするという、いわば廃棄物処理と同じ静脈産業をイチから作らないと、日本中、手がつけられないことになる。そう言い出してから、15年ぐらい経っています。

そろそろ本当に真剣に、この番組を機会に、静脈産業づくりをやらなくてはいけません。そうしないと、新しい家が売れなくなってしまう。ぜひ不動産の皆さん、役所の皆さん、真面目に考えてほしいです。

23ジャーナリスト 片山薫 記者:
0円物件に駆け込む方というのはほとんど、相続して使いようがなくて困っていらっしゃることが多いので、土地をちゃんと相続、引き継いでくれる人がいるのかどうかは、持ち主のほうも考えていくべきだなと思いました。

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<プロフィール>
藻谷浩介 さん
株式会社日本総合研究所 主席研究員
著書「デフレの正体」
NYコロンビア大学ビジネススクール卒業

片山薫
23ジャーナリスト
元経済部筆頭デスク財務省や経産省・農水省などを担当
コロナ禍では政府のコロナ対策取材を指揮