その人が好きなことを自由にやってもらうことで、個性が出て多彩になる。枠にとらわれない支援です。

福島さん

「その人らしい楽しい時間を過ごすっていうことが、大事だと思うんですね。自分が楽しいこと、その時間が過ごせれば、それは自分の人生にとって豊かな時間になるので。アート活動が認められれば、それは支援員さんも嬉しいし本人にとっても嬉しい。外部のいろんな人がそこに応援団で参加して、そしてその可能性を社会の力で引き出すっていう、そういう時代に今なってるんじゃないかなと思います」

けあぽーときゃんぱすサービス管理責任者・髙本一朗さん
「かなり衝撃を受けたというか感動しましたね。どうしてもわれわれは枠にとらわれて見がちなので。もう全て受け入れる、開放するっていうのを職員でやっていきたいなときょうは強く思いました」

問題行動と捉えがちな行動もアートに

障がい者の特性をいかに個性として受け入れ、表現や作品にしていくか。障がい者とぶつかり合いながらも、ありのままを受け入れようと試行錯誤している施設もあります。光市の「福祉メイキングスタジオうみべ」。建物から2人の男性が出て行きます。利用者のOjiさんとオカピーさんです。

Ojiさん(49)
「あー気持ちええね、きょうは」

オカピーさん(53)
「うん、気持ちいい」

Ojiさん
「気温はいいね」

オカピーさん
「気温はいい、うん」

Ojiさんとオカピーさんはうみべに出勤すると毎日、施設周辺の室積地区に散歩に出ます。散歩中の2人の会話を記録しそれをSNSに投稿したところ評判になり、今では2人の散歩の動画を作るほどになりました。多くの施設では問題行動とされるであろうただの散歩が仕事になったのです。

Ojiさん
「きのうなんかも『あれ、よく会いますね』って声かけられたり、そういうことがあるとすごいうれしいですよね」

オカピーさんは絵も描きますが、当初は売れませんでした。しかし、散歩をはじめ彼の性格、個性といった背景も作品と一緒にアピールすると人気が出始めました。

オカピーさん
「散歩でイメージが沸いてきます。Ojiのおかげで助けられてるんで。こうやって仕事させてもらうのも達成感があるし」

2人の散歩の様子はデザイン化され、商品になっています。

福島さん
「人間本来散歩って幸せな時間であるべきってのを教えてくれていますね」

福祉メイキングスタジオうみべ代表 前﨑知樹さん
「そうなんですよ、僕たちもそれを意識してなかったけど、彼らがそういうふうにたくさんの人たちを笑顔にするんなら」

福島さん
「1人1人の個性をポジティブに」

前崎さん
「そうですね」

障がい者の誰もがアートに興味があるわけではありません。ここでは心地よいと感じる場所に、寝転がる人もいればしゃぼん玉を吹く人もいる。障がい者の強烈な個性をポジティブに捉えてその人なりの意思表示、表現方法として受け入れています。

前崎さん

「利用者、アーティストの背景を考えるっていう発想ですね、この発想がもっとたくさんのところに広がれば、きっと問題行動がアートに変わる時代がくるんじゃないかなって感じました」

制度の枠を超え地域全体で支える

従来の福祉の枠組みから離れ、施設や制度の壁を越えて地域全体で障がい者の創作活動を支える仕組みをつくる。さまざまな施設や障がい者がそれぞれの思いを抱える中、松村さんの起業に期待が寄せられています。

障がい者の家族
「本人が好きで描いてる絵なんですけれども、こういった形でみなさんの目にとまるとは、夢にも思ってなかったので」

別の家族
「障がいのある方々に光があたり、また人生が豊かで幸せなものになっていけたらいいなと本当に親としてありがたく思います」

松村さん
「本当にこれ感動するなっていう思い1本で、表現活動のファンとして携わることができてるってことで、企業や地域社会のみなさんが1人でも多く、障がいを持つ方々の可能性を知って、アーティストのファンが地域で増えていく、そして認めていただいた作者、アーティストたちがその地域で受け入れられて愛されて生きていく、そんな社会を夢見ています」

誰もが地域で生きがいを感じて、働くことができる。未来を豊かにするための挑戦です。